dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

夜明け告げるルーのうた

夜は短しから二ヶ月連続で湯浅監督の作品が公開。ピンポンと四畳半神話大系のアニメからハマった新参者ですが、つらつら書いていきます。

 この人の作品って基本的にハズレがない(四作品しか観ていないが)よなーと思っていましたが、今回はあまり乗れなかった気がします。いや、面白いかつまらないかの二元的に判断を下せと言われれば面白いんです。まあ乗れなかったっていうのは自分の思想による部分が大きいので、それは後述するとして作品そのものに対して思ったことなどを。

 まず本作は前編をフラッシュで作っているということなのですが、そもそもそんなことができるのかというのが驚きでした。フラッシュと聞くとフラッシュ倉庫とかあの辺を思い浮かべるのですが、まさか長編映画でやるとは思わなんだ。映画冒頭の人物の動きになんだかCGのキャラクターのような動きというか、そういう違和を感じたのですがフラッシュだからだったのかな。水の表現なんかもフラッシュを使うことでかなり手間を省けたというし、今後もこの手法を使ってアニメーション制作ができるんじゃないかしら。

 アニメーションに関して言えば湯浅作品はもう本当に語源通り命を吹き込まれたようなダイナミックな動きを見せてくれるので、純粋に楽しいんですよね。中盤の浜辺でのダンスシーンなんか古き良きディズニーっぽくてメチャクチャ楽しかった。ルーニーっぽくもあったかな。

 あとキャラデザ。ルーを含め「歌(うこと)」に楽しさや喜びを少しでも抱いている人ってカエル顔なんですよね。セイレーンの三人は言わずもがな、カイのお父さんもふっきれるときの顔が動く瞬間なんかちょっと若返った感じしますし。ただしカイは素直になることができずにいて、少し目がきつめだったりする。

 個人的にはこの作品の中で一番思い入れてしまったのは爺さんだったりする。いやまあ声優に柄本さんを起用している時点で使い捨てではないと思ってはいたんですが、バケモノの子における広瀬すずの無駄遣いっぷりとかが頭をよぎったりしたんですが、上手く爺ちゃんを救済してくれたなーと。

 あと遊歩の好きなアーティストがユイっていうのも良かった。ユイって歌唱力は低いんだけど作詞と作曲は凄く良くて、歌うことが下手くそな遊歩が好きっていうのは凄い説得力があった。ていうか久しぶりにユイの歌聞いた。

 ただ、乗れなかった。青春映画っていうくくりでいいのだろうか、これは。ともかく乗れなかった。青春映画を観ていると、どうしても自分の中のルサンチマンとかノスタルジストが顔を出してくるせいで素直に楽しめないんですよね。それが楽しければ楽しいほどに。別に自分の学生時代を否定するわけではまったくないんですけど、中学生とか高校生が奮闘している作品って自分にとってはどうしようもない過去で、現実の現在に生きる自分とはそもそもパラダイムが違うというか。パンフにあるとおり、本作のメインターゲットはティーンとか子どもに据えているのだから、とっくに成人している自分がお呼びでないことは分かっている。自分のような人間はひねくれた性格破綻者であり、そんな面倒な奴に向けて作られた作品ではないのだから当然だろう。だけど劇場に来ている年齢層は(時間帯的なこともあるけれど)二十代から六十代くらいの人だけだった。もっと休日の早い時間に行けば子供連れがいるのだろうか。

 今作を観て改めて気づいた。基本的におっさんやおじいさんが活躍する話が好きなのは、多分それが過去じゃないからなのかもしれないと。