dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

結局、あの四人って宇宙人だったのか

 個人的には黒木(佐々木蔵之介)だけガチ宇宙人じゃないのかと。佇まいとか、あの人だけ常に超然としてたし、なんかサイコキネシスみたいなの使ってたし。その解釈すらも観た人によって変わってくるのが吉田大八作品ということなのかもしれない。

 言いそびれてましたが「美しい星」を観てきました。「桐島~」と「クヒオ大佐」しか観ていないにわかでありますが、この二作品に関しては現実に地続きに白昼夢が進行するのですが、それが非現実であることは比較的わかりやすく描かれています。ところがどっこい、今作に関しては大杉一家が覚醒してからの現実と非現実のバランスがひどく曖昧で、その曖昧さを保ったままエンディングに突入します。

 だから観終わったあとは「結局あれってどうだったんだっけ。だって、あそこであーなったってことはここはそーなってたわけで・・・」と考えてしまう。だけど、そこに明確な答えは存在しない。そういうふうに描かれているから。

 個人的にリリーフランキー演じる大杉十一郎が火星人としてカメラの前ではっちゃける場面にかかるノイジーな音楽とかすごい好きで、本人は一生懸命なんだけど受け手にはとても滑稽に映る感じとマッチングしていてサントラ欲しくなりました。金なかったんで劇場では買わなかったんですけど。

 そうそう、十一郎が天気予報士ということもあってスタジオ内での撮影シーンが多かったのですが、カメラ越しに映す演出は中々面白かったです。十一郎が火星人として鷹森に突っかかる討論シーンでは、劇中のカメラ映像に片方が映るともう片方はそのカメラから外れる。すでにこの二人は別々のフレームにあって、そもそもからしてこの二人は話が通じないのだということがわかる。それは本当に火星人なったからなのか、火星人になったと思い込んでいる狂人だからなのか、どっちにせよ地に足つけた「常人」である鷹森と話が噛み合わないのは当然なんですよね。リリーフランキーサウスパークでイエスキリストの声を吹き替えていましたし、それに比べたら宇宙人なんてわかりやすい気もしますが(笑)。

 あと橋本愛も良かった。この人の顔は別に好みじゃないんですけど、やさしくない目つきとか髪の毛の艶やかさとか、全体的に美麗な感じで良かったです。首長いから背筋伸ばしてるだけでも結構宇宙人ぽく見えるんですが、衣装もすごいマッチングしてました。不自然さがないというか。顔のゴツゴツした感じも幾分か和らいできましたし。

 亀梨和也もハマってたですぞ。多分大杉一家で一番まともなのは彼じゃないでしょうか。亀梨くんてイケメンちゃイケメンですけど、かなり卑俗なイケメンていうか大学生的な平凡イケメンさな顔なので、宇宙人に覚醒した中でもどことなく現実に触れている部分が常にある一般人的側面を持っているように感じました。

 中嶋朋子っていう人をまともに見るのはこの作品が初めてなんですが、怪しい水を売ってしまうような人間なのに家族の誰よりもまともでリリーフランキがパンフのインタビューで語っているとおり橋本愛演じる曉子の妊娠がわかったときに「地球人でも金星人でも、そういうことはちゃんとしなきゃダメ」って常識的なことを言うんですよね。そういう、怪しい水を売る商法に引っかかってしまい、あまつさえその連中に組みして売る側になって表彰されちゃうようなズレた人なのに、それでもやっぱり地球人的な普遍性を持っているというこの役にぴったりだと思います。メインというよりは準主役とか脇で輝く人だと思うのですよ、はい。

 この映画の宣伝文句に「人間賛歌」という言葉が使われていて、筒井康隆もチラシに「救い」という言葉を使って寄稿していました。けれどわたしは、むしろこの作品からは一種の諦観のようなものを感じ取りました。なんというか、いま直面している問題に真摯に向き合うことは、結局のところ道化的でしかないのではないかと。それは人間にはどうしようもないことで、だからこそ、地球規模の大きな問題というものは異星人(として振舞う)の立場からでしか語りえないのではないかと。だって、地球人である母親は地球のことではなく家族のことしか眼中にないですし、鷹森の意見はあくまで政治的主題を中心に環境問題を外縁に付随させているに過ぎませんから。もちろん、一貫して家族の物語ではあるのですが、あえて環境問題を取り上げたということはそこに監督の問題意識があるわけですし・・・。

 とはいえ、この考え方すら私個人の一つの見解であり、正解ではないということは作品を観ていただければわかると思います。実際に映画を観て、自分がどう思ったか。下手に批評を耳にしたり目にする前に観たほうがいいと思います。そんな作品だと思います。

 余談。実はわたくしU.F.O.を見たことがあります。小学生のときのことです。某遊園地のアトラクションに乗っている時に、すごい小さななんちゃらスキー型のU.F.O.を見ましたのですよ。一緒にアトラクションに乗っていた友達も目撃したので少なくともわたしひとりの幻覚ではないと思うのですが、すごい小さなU.F.O.でした。ラジコンみたいな。