dadalizerの映画雑文

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こどもつかい

春日太一が邦画に対して指摘していたことがそのまんま当てはまる作品だった、と。退屈であくびが出まくってしまった。頑張れば寝れたかもしれないけれど、守銭奴なわたしはどうにか耐え忍んだ。

なんて書くとつまらない作品だと思われるだろう。実際、そこまで面白い作品ではないのだけれど、清水崇のフォロワーではない自分にとって呪怨しかまともに知らないので、どうしても相対化したくなってしまうのである。もちろん同じ監督で同じジャンル映画を撮っているのだから、比較してしまうのも仕方のないことなのだけれど、やはり呪怨に対して面白くない。デジタルで撮っているのだろうけど、画面の質感がどうにも作風とマッチしていない気がする。というか、ホラーに関しては(作品にもよるとはいえ、特にJホラーは)アナログ撮影のほうが適しているのではないかと思う。

ところどころの演出はやはりというか、上手いところも見受けられる。同じ画面の中に二つの異なる世界を同居させる演出や、異界表現として画面そのものではなくカメラを傾けることで表現している部分などは感心しました。また、門脇さんのオーバーアクトはともかくとして、中野遥斗が演じる連くんの肩の根性焼きに対する過剰な反応も、後々の回想で裏付けされますし、そういう細かい部分の演出はすごい良かったんですよ。直美が掴んだドアノブの向こうで起きていたことは……っていうのも観客の想像力をかきたてますしね。まージャンル映画的なサービスのつもりなのか知りませんが、実際にその画面を見せてしまうのはいかがなものかと思いますが。「アイアムアヒーロー」くらい徹底して描くならともかく。

ただ話運びが退屈すぎる。冒頭で書いた、春日太一の指摘していたことというのは「人間を描きすぎてつまらない」ということなんですよね。その点においてこの映画、主人公である直美、タッキー演じるこどもつかい、それどころか後半に登場するキーマンのじーさんまで描く始末。直美は話を回す役割を背負っているので、むしろ描かなければならないのでそれ自体はともかく、回想しすぎ。確か、押入れに閉じ込められる幼少の回想場面が3回はあったと思うんですが、後のことを考えても2回にまで減らせるはず。あとあと、おそらくは「虐待された子どもは、親になるとその子どもに虐待する傾向にある」ということを示したかったのでしょうが、その割に直美のお腹の中の子どもについての話はどこいったのか行方知れず。あとこどもつかいも中途半端に時間を割いたせいでむしろキャラクターに寸止め感を催します。子どもの味方という点はすごい好きなんですけれど、じゃあどうして変態おじさんの父を裏切ってまで子どもを救いたがったのか、という部分に関してはもっと描くべきだったと思うのです。ほかにも殺されるためだけに登場する人もいるわけで(引張るほどのこともでないのにさっさと死なない)やっぱりあくびが出てくるんですよね。記者であること意外の情報が皆無の有岡くんを見習って欲しいものです。こいつもこいつで記者なのに仕事してないんですが。

さっきは演出のことを褒めましたが、逆にどうしてこんなくどい演出するのかと思う部分も何箇所もありました。最後にタッキーが落とされるスロー演出(カット割って真横からのアングルもいれるし)。悪い意味でヒーロー特撮を観ているような感じになりました。

あと全体的に子役の子役感が拭いきれてないのが少々気になる。ジャンル映画ではあるので下手に達者な子役を持ってこられてもほかの演者が演技的演技をしているのが際立ってしまいますし、それはそれで困るんですけど。「君はいい子」で自然な演技を見せていた中野遥斗が若干とはいえ作りすぎている感じがしたのも、おそらくは監督の意図的な部分なのかもしれませんし。

題材からして子どもを話から外すわけにはいきませんし、中野遥斗はジャンル演技とでもいうべき仕事をこなしているので、まあわたしのホラー映画に対するリテラシー問題という部分もありますし、そこまで気になる部分でもないんですよね。実際、ほとんど子どもは喋りませんし。

 全体的に描くべきところを描かず、描かなくてもよい部分を描きすぎているような印象を受けました。ホラー映画のお約束的なものはいくつか散りばめられていますので、全編に渡って退屈、ということではないんですけど海外のホラー映画が進化を続けているのでもうちょっとJホラーの代表作家として頑張って欲しかったなーというところ。なんだかすごい上から目線になってるんですけど、一人の観客としての率直な意見なので仕方ないでしょう、うん。こんなことなら雨女見ておくべきだったなぁ。

絵本や童話のような話ではあるので、バランス次第でもっと面白くなったきがします