dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

笑って泣けて、最後には感動が待っている

なんて書くと安っぽい宣伝文句みたいになってしまう。思うに、こういう考えられていないキャッチコピーってある種の言葉狩りなのではないだろうか。ある文脈上で特定の言葉を使うことで、言葉そのものがひどく希薄になってしまう気がして。そういう意味では、ジブリのキャッチコピーってやはり優秀なのだなーと、製作過程を見るに思ったりする。

 まあ、なんでこんなことを書くのかといえば「ブライズ・メイズ~史上最悪のウェディングプラン~」を観た感想を一言に押し込んでしまうと、まさにタイトルとおりになってしまうからなのです。正確には「笑えるのに同時に胸が締め付けられるような映画」という感じですが。

 ポール・フェイグ監督作品とのファーストコンタクトは昨年の「ゴースト・バスターズ」だったこともあり、そこまで注目していたとかそういうわけではないんですが、ハゲがラジオで割と推していたのでBSでやっていたのを録画して見たのが「ブライズ・メイズ」でした。まーともかく面白い。下ネタもバンバン投入してくるんだけれど、馬鹿らしいものから割と笑えないものまでたくさん。アメリカではマスターベーションにテッシュを使わずベッドなり靴下なりにそのまま射精するという文化は以前から知っていたので、「シーツが割れた」という下ネタは思わず吹き出しました。出てくるキャラクターが全員魅力に溢れているのがよろしいのです。ケーキ屋の看板の名前いじりとか小学生レベルの下ネタも、クリスティン・ウィグ演じるアニーの置かれた状況があまりにどん底であるがために笑うに笑えない、けどやっぱ笑っちゃう。低俗でありながらも奥深い(なんて書くといかにも浅い感じがするのだが)、そんな絶妙なバランスが心地よい。

 「人生から逃げるな」。これをコメディ色の強い作品で、しかも重みを持って登場人物に違和感なく言わせることができるって、もう相当な力量でしょう。親友とも喧嘩してしまい、いっときはいい感じになったポリスとも険悪になり、ナンバーワンのベッドバディでもなかったことを知らされるところとか、笑えますけどはっきりいって状況としてはかなり悲惨。悲惨だからこそ、笑いとばせというメタな視点もあるのかもしれない。

 そしてそのキャラクターたちを見事に成立させている役者たちのアンサンブルとでもいいますか。クリスティン・ウィグはゴーストバスターズでようやく意識し始めた程度だったんですが「宇宙人ポール」とか「オデッセイ」にも出ていたのに気づきませんでした。マーヤ・ルドルフもどっかで観た顔だなーと思ったら「26世紀青年」でした。あれもインパクトの強い作品なんですが、やりたい邦題のせいで割食ってる感じがしないでもないんですよね。あとはメリッサ・マッカーシーですか。この人のキャラがもうともかく色々と下品で最高。洗面台で脱糞するところとかもう色々とひどい。この人の役、途中までは本筋に直接絡まない我が道を往くギャグ要素でしかないと思っていたんですが、実はそれこそがクリスティン・ウィグにとって重要なことであったりするんですね。

 何気ない演出も上手い。アニーがメールを送ってそれぞれの女性から電話で返信をもらうシーンで、メリッサ・マッカーシーだけよくわからない機器に囲まれた空間から電話をしているのが映し出されるんですが、それが後の展開に繋がってくるという。まあここはぶっちゃけ本筋とはそこまで関係ないといえばないんですが、やっぱりメーガンという人物造形の根拠になっているわけで、そういう伏線がうまく生きていたりもする。

ほかにもヘレンの娘の反応とかも最高なんですよね。画面にアップになって「so ausome」と口にする前からニマニマしているのとか。

コメディ映画と侮れない、観ていて目を背けたくなるような部分もありながらやっぱり笑える。人生に背を向けているような自分に後ろ指をさすような、素晴らしい作品だった。