dadalizerの映画雑文

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疑問符だらけの映画

 土曜日に「ジュリーと恋と靴工場」を観てきたんですけど、タイトル以上のものは一切出てこないです、はい。

 疑問符だらけというのは、人物の行動や見せ方や衣装など演出全般が悉く「え、なんでそうなるんだ?」と観ている間中ノイズだらけになってしまったということ。単純に言えば退屈でした。ガッチャマン的な楽しみ方もできないような。

 ミュージカル映画なんて片手で数えられるくらいしか知らないので、実はちゃんとした手法に則っているのかもしれません。が、ミュージカルシーンですら単純に面白くないというのはさすがにいかがなものか。

 まず工場で女性社員が踊るわけですがカット割りすぎではなかろうか。「ラ・ラ・ラ・ンド」が実はいかに周到に色の配置をしていたのか、ということが相対的に浮かび上がってくるような、女性社員たちの衣装のちぐはぐさ。社員として近代化によるリストラの波濤へと立ち向かうというところで意思を同じくしているのですから、そういうのを一目見てわかるような衣装にすべきだったと思うんですよね。や、そのちぐはぐさに実は社員たちの団結力のなさや表層的で浮薄な絆でしかないということの暗喩であるのかも、と思って最後まで観ていましたが別段そんなこともなく。ていうか単純にダンスが・・・。その下手っぴぃさを笑うという類でもなさそうなんですよねぇ、だって。

 

ストライキしてたかと思えばなんか普通に梱包作業してるし、それを回収しにきたトラックマンたちとの半笑いでしか見れない押し引き(物理)。びっくりしたんですけど、花いちもんめみたいに向き合って並んだかと思えばそのままお互いに押し合うという。レイプのメタファーのような撮り方をしていたり、抑圧された女性像を描きたかったのかしれませんが、そここそミュージカルで音楽と踊りで見せないでどうするんですか。なんでそんなとこだけ夢の中の喧嘩みたいな珍妙な生々しさで描くのか。

 それに搾取側の社長の描き方も謎です。弱者から搾取して自分は私腹を肥やすというのであれば、敵対者として見ることもできるでしょうが、この社長、着用しているものすべてを中国産のものにすることでコストカットを図っているというのです。それってむしろ好印象でしょうよ。社員側はそれを知らないのでまだしも、観客にそんな場面を見せちゃったら対立関係描けんでしょう。まあ、社長は元からコメディリリーフなのでこれはそこまでアレなんですけど。

 あと肝心の主人公の行動がわからん。どうして最後にそうなるのか。

あと最初はチャリンコに載ってたと思うんだけど、なんか特に説明もなくいつの間にかバイクに乗っていたりするのもクエスチョンマーク。んなことどうでもいいんですけどね。単純に、映画が退屈なことに比べれば。

 社会問題という現実に即したもの映画の中で描きたいのなら、なおさらミュージカルシーンを飛び抜けたものにするべきだと思ふんですがね。

 

 こんなこと言うのも何様かと我ながら思いますが、あきらかに熱意もなければ工夫もない気がするのですよね。「ラ・ラ・ラ・ンド」のようにアイキャンディの詰まった色・音楽・踊り・恋・夢と陽気で(だけでもないんですが)独善的な世界を大胆に画面いっぱいに映し出したほどにはアイデアも熱意もなく、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のように胸が締め付けられるような苦痛の現実を徹底的に描き、そのカウンターとしてビョークの夢想を哀愁と喜びを見せてくれたほどの執念もなく、「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」のようにフリークス(この映画の場合は弱者でしょうか)たちを生暖かく見つめる視線もない。

 端的に言って、いろんなものが足りていないように思えます。

 単純に、退屈な映画でした。