dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

消化録

BSの名女優特集「乾いた花」

監督の篠田正浩フィルモグラフィーでは不幸なことに「梟の城」しか見たことがなく、この映画もはっきり言って残念な出来栄えだったのでどうかと思ったんですが「乾いた花」は普通に良かったです。ラストシーンの階段を登っていく中でのオペラと殺人という組み合わせは時代を考えるとかなり先駆けていたんでないでせうか。

 

「大冒険」

 クレージーキャッツのアイドル映画。ザ・ピーナツも出ている。もちろん、両方とも知らない(ピーナツに関してはモスラ関連でちょこっと知っている程度)わけなので、当時の人が見たようにはこの映画を観れるわけではないのですが、今の目線で見るとどうなのだろうか、これ。

 基本的にはスラップスティックコメディで、アイドル映画といっても映画としての骨子はしっかりしている。が、やはり画面中に当時のにおいが蔓延しているわけで、それがさらに笑いに拍車をかけている側面があると思う。

 普通に言っているけど、ホテルメリケンって今じゃ狙った笑いとしてしか描けないのだろうけれど、当時はたぶんそれが普通に使われていた言葉で、それを今の目線で見るからこそ笑えるという部分もあるし。当然のように同居する差別用語というのは、やはり当時の作品ならではだと思う。

 それと、徹底したコメディ空間が生じさせる狂気というものもこの作品にはある。人がビルから落ちてきているのに、通行人は見向きもせずに素通りしていくという。背景と焦点あたっている部分が完璧に乖離しているがゆえに「なんだこれ」となる不思議な感覚。

 ほかにも見所はある。馬と汽車という西部劇には溢れた組み合わせが日本人の顔と日本の田舎という背景に置き換えられたときの奇妙な笑いや、ナチス要素など。なにげに円谷特撮もありますからねーこれ。あと主役の植木等が走りっぱなしなのも観ていて気持ちいいです。全力で馬鹿をやっているので嫌味がなくすっと楽しめる映画というのもたまにはいいんじゃなかろうか。いや、ギャグはさすがに古いというかコテコテだし傑作とはいわんけど。