「尊い」というのはこういうことなのでしょうね。
寄る辺ない、両親すら頼れない、いじめられている少年と吸血鬼の少女(少年?)の
邦題からてっきりベンジャミンバトン系かと思っていたのですけれど、まさかの怪奇映画。いや、怪奇というよりも幻想小説のような趣がある。
これ重要なシーンで(まあ仕方ないとはいえ)局部にぼかしが入っていたので、ウィキを見て初めて(原作の)設定として男の子だったことを知りましたですよ。
いや、「吸血鬼カーミラ」に通じる空気感があったし、個人的な欲望として「これ少年同士だよね?そうだよね!?お願いだからそうであってください!」という心情ではあったので、なればこそそれを劇中ではっきりと確認したかった、というのはある。
いや、ペドフェリアということではなく、それが劇中でしっかりと意味を持っているから。「プリディスティネーション」でも局部に暈しがあったのですが、あれもあそこを映すことに重要な意味合いがあったので、その辺のバランスは難しいところではあるのかな。本国では無修正だったらしいので芸術的価値を優先したということなのでしょうけれど。
まあ、はっきりとはせずともエリを演じたリーナのどことなく中性的な顔立ちや、そこはかとない仕草なんかが少年ぽくはあったんだけれど。いや、嘘です、完全に自分の欲望の色眼鏡で観てました。
カメラワークもあまり日本やハリウッドで作られるような映画とは異なっていて、すこし距離のある場所から人物を撮っていたりするし、その独特な距離感というのが「さよなら、人類」なんかを想起させたり。
美術も素晴らしい。エリのメイクもそうですし、何よりあの魅惑的で幻想的な世界観はあのロケじゃないと無理でしょうし。
あの雪の世界は本当に魅惑的で、日本じゃ絶対に無理でせうな。
オスカーがいじめっことを殴るところの、あのリアルな重さと痛み。あれは下手なアクション映画やゴアな映画よりも痛みを感じると思う。というのは、似たような経験が自分にあるからだろうか。
人があっけなく死ぬあの感触もそうですし、見せないことの巧みさといい、やっぱりその辺も怪奇映画というか黒澤清的でありつつもそっちとは違うような感覚もあって、なんだかすごい映画だと思う。
これは久々にオールタイムベスト級の大好きな映画になりもうした。