平山夢明原作と聞いて観に行ってきました「ダイナ―」。
まああの変な人の作品は実のところ一作しか読んでなくて、それが滅茶苦茶面白かったのと、過去の作品の書評を読んでるとずっと同じタイプの小説を書いてきたのかと思ったので「ダイナ―」もそういうタイプなのかと思ったんですけどね。
なんだよファミリー映画じゃないかよー。期待したものと違うものだったよこれ。
で、まあ、例のごとく「ダイナ―」原作は読んでないけど、コミカライズされているのを最初の数話だけ読んだ感じだと、導入部分とかの展開はほぼ同じだしこりゃ原作も同じ感じなのでしょうかね。
原作もオチ同じなのだろうか。だとしたら、なんかこっちが勝手に平山夢明を勘違いしている可能性が高いんだけど。
なんかモヤモヤするものがたあったから、映画観た帰りに図書館寄って借りようと思ったら貸し出ししてましたよ、ガッデム。
ウィキも「ダイナ―」と「テラフォーマーズ」のノベライズしかページ作られていないあたり、なんか色々モヤモヤするんですが。
というのもこの「ダイナ―」、なんかもう中二病患者が考えたような設定だからなんですよ。で、そういうたぐいの作品だけウィキの記事がある、というのがモヤモヤするのですね。
ま、一作しか読んでいない私があれこれ言うのもアレなんですけど、「ヤギより上、猿より下」を読んだ人間からすると、あの人間の底辺の底辺のどぶ底をさらったようなものを見せてもらえるかと思ったので、そういう意味で期待してたものと違ったというわけなんですね。
平山夢明にしてはかなりメジャーな作風であるから、ここまでメディアミックス展開ができたのかもしれないし。本人も本人で変人狂人の類のくせして「ゴッド・ファーザー」フリークなので、王道みたいなものはちゃんと外さない人なのだろう。
前置きはこの辺にして、映画本編について吐き出していきますか。
原作読んでないので何とも言い難いのですが、ウィキ読んだ感じだとキャラクターの設定はだいぶ弄られている気はする。
監督は蜷川実花ってことで、わたくしは沢尻エリカの「ヘルタースケルター」は観たけど「さくらん」は観ておらず。ただ、本質的にやってることはそこまで変わってはないのかな、と。
てか蜷川監督9月にも映画公開するんですね。しかも太宰治の女性関係の話。まあ普通に「人間失格」と同じような話になりそうですが、どうなんだろう。「人間失格」は結構前に生田斗真主演で浦沢義雄が脚本に参加したものがありましたっけ。観てないけど。生田斗真と小栗旬を並べるとイケメンパラダイスを思い出しますね~。
ちょっと脱線した。
まず言えるのは、この映画は映画というよりは舞台みたいなんですよね、全体的に。
一つは俳優たちのオーバーアクト合戦。藤原竜也を主演に据えている時点で予想はできていましたし、ヒロイン役の王城ティナ(なんかこの人の名前ってAV女優っぽい)も繊細な演技ができるタイプではないし。
窪田くんはどっちもイケるタイプですが、今回はクールな立ち振る舞いのときもどこか戯画化されたような演技でしたし、後半で自殺しようとするあたりのハイテンションぶりも明らかに過剰。
本郷くんとか斎藤工とかも言わずもがな。あとは真矢みきとかも、繊細さとか器用な演技をするタイプというよりは、やっぱり舞台向きの演技をするタイプでっしゃろ。
あとはライティングとか。すごい露骨だし、冒頭のカナコのモノローグで本当に舞台に立たせていたり、人込みの動きを過剰に演出してみせたり、ああいうのってあまり映画ではやらないでしょう。
セット(だよね? あの店の内装とか)のけばけばしさも、ほとんどリアリティを欠いていると言っていい。それこそ「ヘルタースケルター」みたいに。
あとはそう、カナコのモノローグもそうだけど全体的にCMみたいな絵作りというか編集が多い。そういう意味では中島哲也監督あたりとも割と同タイプな気がするので、好き嫌いははっきり分かれるだろうなぁ、というのは想像に難くない。
ただ、あの世界観を邦画のライブアクションで表現するには、これくらい画面全体を過剰にしてカリカチュアしないと無理だろうな、というのはわかる。中途半端にこの世界観から逸脱するようなリアリティを持ち出してこないあたり、監督もその辺のバランスはわかってるんだと思います。
しかし楽屋落ちというか身内ネタというか、あの辺とかもすごい賛否分かれそうですよね、あからさますぎて。すでに死んでいる大ボスに蜷川幸雄をあてがったり、藤原竜也に「ボス(蜷川幸雄)が俺を拾って育ててくれた」云々を言わせるくだりなんか、あからさまでしたし。小栗旬がしょーもない死に方する(というか、しょーもない死に方をする役に小栗を当てたんだろうけど)のとか、あのあたりも身内のノリを感じる。
蜷川ファミリーのことに大して関心がないけど事情は知っている、という程度の自分は割と「あはは、バッカだなぁ」と笑えるバランスではありましたけど。
クライマックスの二人でお料理は突拍子もないように見えますけど、あからさまなセックスのメタファーなので、命の危機に瀕した二人が性交渉云々という理屈としては一郎成立するんですよね。これ年齢制限もないみたいですし。いや、原作でも料理してるのかもしれないけれど、コミカライズ見る限りだと普通に性的な表現もあるっぽいので。
話自体は大人よりはむしろ中高生男子あたりが好きそうな題材ですし、全年齢向けという狙いはわからなくもないのですが、そのおかげでエロさやグロさというものが脱色されてしまい、代わりに導入されたのがポップでキッチュな蜷川節なので、本来あるはずのものが挿げ替えられているという点でどう足掻いても賛否分かれるような作りになっているのだなぁ、と。
全体としては、私はどちらかと言えば好きではある。
假屋崎省吾みたいな小栗旬とか、三下雑魚の武田真治とか、斎藤工とキタエリの馬鹿っぷりバカップルとか、身体合成された本郷奏多とか、そういうバカバカしい笑っちゃうキッチュさがある一方で、真矢ミキと土屋アンナがすんごいちゃんとかっこいい人がいるんですよ、これ。
正直、真矢ミキをここまでカッコよく思えたのは初めてかも。さすがは宝塚といったところでしょうか。ていうか、上司とかお母さん役よりもこういう役の方が真矢さんの本領だと思うんですけど、むしろ今までなぜこういうのが私のような情弱の目にも触れるような場所に出てこなかったのが謎。
あと土屋アンナ。この人の劇中での言動とか立ち振る舞い自体ははっきり言って「どこの三流ラノベから持ってきたので?」と思うくらいなんですけど、黒ブラに花魁っぽい服装の土屋アンナがキマりすぎている。
超カッコエロいいんす。元から土屋アンナは黒髪の方が良いとは思ってたんですけど、今回はまさに我が意を得たりといった感じ。
正直カッコイイこの二人が観れただけで個人的には元取った感じ。
あと菊千代。見張り役という名の番犬でちゃっかり最後まで生き残る菊千代萌え。
何気にかなり違和感のないCGで驚き。
どうでもいいんですけど「あるてぃなんちゃらかんちゃら」とかいう色々な肉のパテを使ったハンバーガー滅茶苦茶美味そう。
あとはバカップルとカナコが吊るされる工場みたいなところ、あそこの雰囲気もいいなーと。あれセットなのかロケなのか、どっちなんでしょう。
でもやっぱり、これはかなり嫌いな人がいてもおかしくないだろうなぁ。
私の場合は一周回って面白いと思いましたけど。