dadalizerの映画雑文

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吉岡里帆+座頭市+中堅ハチ公な試写会

もちろん半分冗談ではあるんですけど、座頭市に限らず盲目の方というのはやたらと超人的に描かれがちで(多分、感覚的に視覚的健常者の理解を超えているからだろうけど)はあるんですけど、トゥデイ本日今日の完成披露試写会で観賞いたした映画も、超人とまではいかずともかなりハンディキャップ()を負った方とは思えないムービングでございました。

いや、先天的とかならまだ納得はできるんですけど。盲導犬を連れてると、むしろ人間個人としての適応能力は退化してそうだし。

 

というわけで「見えない目撃者」の完成披露試写会に行ってきました。

ネタバレ全開でいくので「見えない目撃者」を100パー愉しみたい人はここから下は読まんといてください。

 

 

適当に試写会に応募して後から調べたんで知らなかったんですけど、これR15なんですね。

それを知った瞬間に吉岡里帆のエロエロエッサイム!?高杉真宙たんのエロエロエッサイム!?と勝手に興奮したのですが、よく考えたらそういうのがあるのはR18だしこのバジェットと吉岡里帆という多分に事務所のプロテクトがかかっていそうな(といってグラビアから転身したんでしたっけ、この人?)キャストでそんなの望むべくもないべ、と落ち着きを取り戻す。まあぶっちゃけ吉岡里帆にはそこまで関心はないんですけどね。

ていうかそもそも同タイトルの韓国映画のリメイクということらしく、当然未見。「サニー」とか「22年目の告白」とかとか、韓国映画のリメイクが割と大々的にプッシュされていますな。

まあ韓国映画の質は高いので、そのリメイクであればある程度のクオリティと観客動員が見込めるから企画が通りやすかったりするのかもですが。

実際、あんまり期待していなかったですけど、個人的には結構楽しめました。 

 

 

えー舞台挨拶つき完成披露試写会ということで出演者が登壇しての挨拶がありましたので、ちょろっとだけ触れようかとも思ったんですけど、思った以上に当たり障りのないキャスト陣の挨拶がほとんどで特に書くことがないという。

ああでも、司会進行役のお姉さんが投げる質問に対して高杉くんや吉岡さんの受け答えがどことなくバツが悪そうだったのは映画の本編を観てわかった。特に高杉くんに関しては(スケボーやってるの、ほとんど高杉くんじゃないんだろうなぁ。本当に高杉くんがやってたら顔映すべなぁ)という印象を抱くくらいスケボーシーンでは足元のショットばかりで、ちょっと思い出し笑いをしたり。いや、本当に。

まあスケボーって結構難しいですからね。私も友達に教わってどうにか平地で進むことまでは覚えましたけど、簡単そうに見えるああいう技も結構練習しないとですし。

あと吉岡さん演じるなつめの弟役で今回映画初出演という松山さんがいやに緊張していたり受け答えの歯切れが悪かったのも映画開始5分で納得。

あの登場時間と役割で舞台上に立つのは、私はむしろ羞恥プレイなのではと思ってしまいますし。

そんな感じで舞台挨拶自体は本当に内容が合ってないようなもので、とりあえず吉岡さんをヨイショする~という流れでした。

あとはそう、キャストの方々が「走った」と結構言っていたので走るシーンに期待していたのですが、割と本気で初老のおっさん(主にトモロヲ氏)の「いやぁ久々に走ったねぇ」というもの以上の印象はなく・・・。いやトム・クルーズ並みのを期待していたわけではないんですけど、アングルとか、もうちょっと気持ちのいい走る姿を見せてほしかった。

トモロヲさんは相変わらず話慣れてる感じでしたしね。大倉さんも左に同じ。

個人的に良かったのは國村さんの生声が聞けたことでしょうか。

挨拶も卒なくこなし卒なく笑いを引き出すあたりはもちろん、静かなのにはっきりと通る声で、正直これだけでも満足しちゃってました。

 

かと思いきやサプライズでパルちゃん盲導犬役の犬)が登壇し、一気に会場が沸く。

トモロヲさんがマイクを向けるとガジガジ噛みだすパルちゃん萌え。フォトセッションで國村さんに抱き着くパルちゃん萌え。カメラに向かって吠えるパルちゃん萌え。

本編では正直いてもいなくても特に問題ないパルちゃん萌え。

 

といった感じで多幸感あふれる舞台挨拶でございましたです。

 

 

ではそろそろ本編について。

一応、今回吉岡さんは元警官の視覚障碍者というキャラクターなのですが、これがもう警官(になるまでの過程)としてのなつめの時間はウルトラマンの地球上での活動時間よりも短いのではないでしょうか。と思うほどすぐに警官じゃなくなります。

冒頭のモンタージュで警官としての訓練のシーンがさらっと流されて証書を受け取って、いざゆかん、となるのかと思いきや夜遊びしている弟を車で拾い上げてそのままなつめのわき見運転でクラッシュ。

ここまで多分5分もかかってないのでは?

でまあ、一応あらすじは知っていたので車に乗った瞬間からもう「このあと亡くなるんだよね・・・」という笑いがこみあげてきてしまう。

事故までの展開があまりにスピーディであることにも笑う(事故のSEがいやにデカいので音量注意)。それにくわえ、事故った際にトラック運転手のおっさんになつめが救出されるんですけど、なぜかそのままおっさんが自然とフェードアウトしていって「どこいくね~ん」というツッコミ待ちな絵面のまま弟が爆死するというあたりは本当に吹き出しそうになりました。

なので「ああ、そういう感じで進んでいくのね」といった姿勢で観ようと思っていると、割と真面目に作っている(まあ撮影の高木さんの手腕が大きいと思うんですけど)ので結構どういう心持で観ればいいのか迷う。

といっても細かい演出にはいろいろと「んー?」となりつつも脚本に目立った粗があるというわけではないですし、むしろ割と手堅くはあるんですけど、それが逆に2時間のテレビドラマスペシャルっぽくもある。ある一点を除いて(そしてその一点こそが本作のキモでありテレビドラマと一線を画す作品になっているともいえる)。

またサスペンスとして見せたいのであれば(というか真犯人のくだりはそういう意図があるでしょう)いささか真犯人の印象が薄いのが残念なところではありますかね。

犯人が判明したときに「お前が犯人だったのか!」と思えるキャラクターが真犯人でなければならないわけですけど、この映画で真犯人が明らかになっても「え、ああ、さっきのあの人か」という程度なので。

 

とはいえ、本質的にはこの映画はスプラッターホラーではあるので、その辺は割とどうでも良かったりします、個人的に。

むしろ真犯人が判明してからの怒涛の展開が面白い。

この映画、割とキャラの生き死に大してシビアなのですよね(思えばこれも2時間ドラマと異なるかな)。なのでそのへんは割と新鮮でした。とはいえ、イケメンバリアはありましたけど(笑)。

まあトモロヲが死ぬのは既定路線(いくら警察官とはいえ犯人+異常者だと確信している相手に対して背を向けるのは馬鹿すぎると思いますけど)として、いざ鎌倉!な勢いで敵地に乗り込んでおいて返り討ちに合う大倉さんとかのムービングは「ムカデ人間」の刑事のような無能っぷりで笑えます。しかも大倉さんの死にざまはかなりサービスされていて、すわ「DAWN OF THE DEAD」のフライボーイゾンビかと思うような頭のかち割られ方(一旦押し返してるのに結局負けるのも爆笑ポイントが高い)をしていて笑いました。

被害者救出の一連のくだりはまあ、色々と言いたいこともなくはないんですけれど、解体部屋(勝手に命名)の赤い照明のライティングとかあのアングルからの撮影とかは割とブキミで好きだったりしますし、何より浅香さんの真犯人のキャラクター、っていうか表情が良い。

絶妙に表情を崩さないまま淡々と作業に勤しむ感じとか、そういうかっこいい動きをしておきながら絶妙に下手をうつ(脚本の都合上)感じとか愛嬌がある。

というのは半分ジョークにしても、浅香さんの表情と動きはマジでいいです。まあ六根清浄のくだりを模倣したのは殉教したいからなのか、それとも本人が口にしたようにただ単に人を殺したかっただけなのかははっきりさせてほしかったのと、ここの問答は割と苦痛だったのだけはいただけないかな、と。

でも「ドント・ブリーズごっこからのなつめの射撃は(まあ、ぶっちゃけ予想はできてましたけどね。これ見よがしに音鳴らしてたし)しっかりと納得いく幕引きでしたよ。欲を言えば盛り上げてほしかったとは思いますけど。

 

ただ、私が何より好きなのは、殺された家出少女たちの遺体、の記録写真なのです。

写真と言わず、損壊した死体そのものがはっきりとアップで映るんですけど、不思議なことにそれよりも記録として写真に納まる彼女たちの遺体の方がグロテスクなんですよね。

でも「遺体写真」それ自体はそこまで珍しいというわけでもない、と思う。

ではなぜ、今回に限ってそれが印象に残ったのか。それは多分、フラッシュの具合によってそう見えるというのもあるのかもしれないけれど、それ以上に身体の一部を奪われた上になお(それが法的に正規の手続きであるとはいえ)撮られるという幾重もの略奪の構造を、てらいなく描出してしまっているからだろう。

ここは図らずも「撮る」という行為のグロテスクさを浮き彫りにしてしまっている。その無頓着な行為のグロテスクさが立ち現れてくるからなのかな、と。

ぶっちゃけ、ここがなかったらそこまで印象には残らない映画ではあったと思う。

 

あと切り取ったパーツをそのままささげてるのもポイント高い。下手に冷凍保存とかしないで、本当に供物として扱っている感じが。だからこそ「人を殺したいだけ」発言がもやるんですけど。

あと手首切断をズームで撮っているのを神妙な顔つきで國村さんが解説しているのも良き。

この映画、そういうグロテスクな描写のところが妙に凝っているので、そういう意味ではR15の映画の振る舞いとしては正攻法なのかもしれませぬ。

 

観終わったあと、「あれ、よく考えたらこれ犬いらなくない?」とか言わないように。可愛いは正義です。