dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

ロボット2.0 試写会

というわけで「ロボット2.0」の試写会に行ってきました。

 

1作目が確か2010年とかだった気がするので、ほとんど10年ぶりの新作ですか。
お話の内容は細かく覚えていないんですけど、ひたすらCGを使ってあほらしい映像を見せてくれる楽しい映画だったような気がしたので、頭空っぽにして楽しめるタイプとしては割と好きな作品ではあった、と思う。周りの評判も良かったし。
なので本作も割と愉しみにしていた。


本編の前にちょっとしたトークイベントもあったのでそちらについても例のごとく少しふれておきませう。

ゲストは有村崑さんとハリウッド・ザ・コシショウさんでした。ええ。映画の内容が内容だけにゲストも何となく軽さを感じさせますね。

有村さんについては、以前なんかの番組で一度に数本の映画を同時に観賞するとかいう「それどう考えても内容頭にはいってないですよね?」な観賞方法をしている、という話をしていて個人的にはあまり信用していない人ではあったのですが、インド映画の文化的背景についてなどの話はためになりました。さすがに事前のリサーチはしている様子。まあ少なくともおす〇と〇ーコよりは信用していいのかもしれまへんね。

以下内容をさらっと箇条書き

北インド(エリート系)と南インド(庶民派)と大別できて、ボリウッド映画は主に前者だが昨今は南インドからの映画も存在感を放つようになってきている。
南インドカーストの名残がまだ残存しているため、成り上がりが難しい中、「ロボット」シリーズの主演であるラジニカーントは大工やバスの運転手からトップ俳優へと転身した人なのだとか。
 ・人口と経済力ブーストによって年間の映画製作本数が2位の年間800本の中国に大差をつける1800本と異様に供給量がある。ちなみに3位はアメリカで600ちょい、4位は日本で500ちょいだそうです、確か。
・インドは細分化すると言語が600以上あるため、多くの人に理解してもらえるように作るためにシンプルな物語になるのだとか。

と、まあそんな感じでしたでしょうか。

そこからザコシさんが「ボリウッド」Tシャツを着て劇中のあるシーンを再現したコスプレで登場からのネタ披露といった感じ。

気になる人はこの記事を参照
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191016-00000107-natalieo-ent


はい、そんなわけで「ロボット2.0」。ま、前作からこの映画シリーズのやっていること、というか映画的戦略というのは実に分かりやすい。「質より量(数)」ということですね。

今回もその路線を引き継ぎ、続編ということでその量(数)をただブーストしただけというあたり続編としての真っ当な佇まいが見える。

しかし今回はそれが度を越していて、インド映画史上1位の制作費90億円(バーフバリが70億円ちょっと)とのことで、こんな(とか書くと失礼だけど)映画に90億も投じれる国力というものを感じざるを得ない。
とはいえ、ハリウッドの超大作はその2~3倍の予算は軽く出してくるので、あくまでインド国内限定ではありますが、それでも90億円ですから大層なものです。

「ロボット2.0」が面白いところは、ハリウッド映画であれば90億円あれば一つ一つのVFXを丁寧に仕上げていく(質)ことに注力するのに対し、こちらはひたすらに「量(数)」を増し増しにすることに注力するということです。

弱き者の兄弟曰く「中身のないヤツが数を誇る!」
しかしである。それだけの予算をもってしてひたすら量・数を過剰供給することでしか見えてこないものというのも確実にある。

それが顕著に表れるシーン(まあCGのシーンはほぼ全部そうなのだけれど)は、敵であるスマホロボかつバードマン(これ本当に「バードマン あるいは~」のバードマンまんまで笑います)が人間だったころの回想シーンで(この回想シーンも20分くらいありまして、その辺の「どう考えても編集で短くするところですよね?」な部分も盛り込んでくる物量作戦)CGの赤子が大きく映し出されるのですが、この赤子がやばいです。

個々のクオリティではなく全体の量を増やすことに注力したせいで、このCG赤ちゃんが完全に不気味の谷に垂直落下しています。まごうことなき谷底です。なまじCGがよくできているがためにかえって不気味になってしまっていて、超グロテスクです。

このグロテスクさは「アメリカン・スナイパー」におけるCG赤ちゃんを超えてきています。あれも相当でしたが腕だけだったし、その点で言えば「ALWAYS~」のCG人間に近いのかもですが、あちらよりもディティールが凝っているがゆえにそのモーションの不自然さなどが返って際立つという不気味の谷への真っ逆さま具合などは、クオリティ重視のCGでは見られますまい。

またグロテスクで言えば、スマホが体内に侵入して体内から爆殺するという絵面があったりと、なんか予算のないマイケル・ベイがやけを起こしたらこんな感じになるんじゃないかという気がします。派手な爆発もあるし。

と、まあそういうキッチュな楽しさで割と満足していたりするのですが、割と本気で悍ましいシーンもあり、たとえば無数のスマホに部屋を囲われてしまう悪夢的なシーンなどは下手なホラーよりも怖いですし、部分部分での視覚的な楽しさはあるし、それだけで個人的にはOK。

ただ逆にそれ以外のVFXを多用したシーンはしょっぱい(それでも受容されるのでしょうが)戦闘ばかりで、正直なところ怠いです。長いし。

鳥が云々とか、勧善懲悪な構図みたいなものも破綻しており勧悪懲悪と呼んで差し支えない周囲巻き込み型戦闘・人質もとい鳥質作戦を展開しますし、その辺はもうご愛嬌というか突っ込むだけ野暮というか突っ込む方が馬鹿と謗られるレベルですので。
あとは90年代のオカルティズムもあわやといったバードマンの設定(「ムー」あたりの霊はプラズマ並みのアレ)だったり、もう本当にその辺はね。

巨大ロボットバトルが観れたんだからまあいいじゃん、とかそういう心持で観るべき。



あーあとはあまりインド映画を観ないのですが、喫煙シーンにてカット単位で画面左下に「喫煙ダメ絶対!(意訳)」な注意喚起が表示されるのは笑いました。
場面単位ではなくカット単位で喫煙しているカットごとに表示されるこまごまとした編集が。そういえば大河ばかりで喫煙シーンのあるインド映画というのは観たことなかったのだけれど、ああいうのがあるのですね、インドって。



脚本というかお話はまあずさんだし、カット割りのタイミングとか前述したような回想の長さとか、はっきり言って怠い部分は多分にありますし決してウェルメイドな映画とかではないのですが、それでも物量の過剰供給と所々のシーンでそれがもたらす歪なものが見れたりするので、そういう意味ではほかにはあまり見られない映画ではあると言えるのではないかと。


これ、絶対に日本では万人向けとして送り出すのは無理だと思うのですけど、インド本国では2018年の1位のヒットで歴代2位のヒットだというのだから驚き桃の木山椒の木です。