dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

スーパーマンならぬスーパーボーイ(邪悪)~I'm a bad guyを添えて~

いやあ「スーパーマン」を、しかもよりによってリチャード・ドナー版の方をあんな最悪なパロディにするとは。

というかまあ、この映画のコンセプト自体がスーパーマンの裏返しなわけなので筋は通ってるんですけど、にしてもあの空中ランデブーの背景との浮き具合といいドナーの「スーパーマン」をあまりに露骨にパロりすぎでっしゃろ。目からビームとかも。
それと飛行機のところは何となく「ドニー・ダーコ」感が。

あとはあの農場の風景と超能力少年の傍若無人というモチーフはナイト・ビジョン(リメイクの方のトワイライトゾーンだったかな?)に同じような話がありましたな。
ていうかオムニバス映画版の方でジョー・ダンテがやってましたっけ。あっちは観てないんですけど、ジョー・ダンテだから面白いはず。


ジェームズ・ガンがプロデュースに回っているというのはこの映画を最後まで観た後だと妙に得心する。

個人主導でバースを作るという試み自体はすでにシャマランという先人の切り開いた轍がありますから、ジェームズ・ガンもその辺の勝算があってのことなのでしょう。
ジェームズ・ガンのやりたいものって要するにグロ・ゴアなユニバースものなのでは。トロマを経てMCUを経て次にジェームズ・ガンが志向するのがそのどっちもの合わせ技でいこうとするのは確かに分かるのだけれど。
確かに色々なバース映画が跋扈していますが確かにその路線はなかったし一定の需要はあるのだろうけれども。だからレーティングが低いのかもですが、配給もRakuten系列というのがちょっと不思議。
脚本周りもかなり身内で固めてるし、今後の展開を見据えてあまり口出しされたくないということなのかしら。

この辺の事情が載ってるのかはわかりませんが、どうあれ、お金なくてパンフ買えなかったのが悔やまれる。

にしてもゴア描写は本当に徹底しています。特にあの目のくだりは本気で目を背けちゃいましたよ。あそこまで本気で描写するのって私程度知識ではそれこそ「アンダルシアの犬」くらいしか思いつかないんですけども、この規模であの描写はちょっとないんでは。

それ以外の部分ではちょいちょい「おいおい」と言いたくなるところもあるのですが、90分というランニングタイムを完走しきるだけの力はあるかと。
さらに言えば、その「おいおい」な部分も「子を授からなかった」ブレイヤー夫妻の親としての気持ちや葛藤といった意をくめば実はそこまで不自然でもなくもなくもないのですよね。

この親としての葛藤は血縁という強固な繋がりを持たないがゆえに(それどころか隕石から出てきた赤子なので)息子を最後まで息子として信じることができなかったのが空中ランデブーなわけで。

この両親の葛藤が一線を越えてしまう二か所のシーンにおける、ブランドン役のジャクソンの顔の「・・・え?」といった困惑と哀愁の表情が実にグッドです。
それ以外のシーンでは割とポンコツな演技も見えるような気がするのですが、両親が一歩踏み越えてしまうところの、それがもたらしてしまう不可逆な結果も相まって(絵面は結構馬鹿っぽいんですけど、行われてることは虐殺なのでやっぱりぐろい)ちょっと悲しくなってしまう。

そう、この映画が最後まで突き抜けられるのは実のところはそのキッチュなヒーロー性の部分ではなく親子の繋がりを、しかし確固たる係累を持たなくとも信じることができるのか、という底意地の悪い問いかけ部分のポテンシャルなのでせう。

これって何気にジェームズ・ガンが「GotG.vol2」で描いていたことでもあるんですよね。
それがひっくり返ってしまったバッド・エンド、ヨンドゥから声をかけられず電池になってしまったスターロードくんの姿なのでせう。

最後まで残るのが母親、というのも上手い。下手にエディプス・コンプレックスに行くのではなく(最初の犠牲者は別の母親だし)、息子にとっての母親(その逆もしかり)の愛が試されるというのは、かなり納得がいく。あそこは父親では成立しえないんですよね。その辺は外さないあたり、やっぱり家族の物語でしかありえないのです、この映画は。

ある母親は言う。「たとえあなたが人を殺したとしても、私はいつまでもあなたの味方だから」と。

けれど、そこに血縁という繋がりがなかったら? そこにエイリアンという隔絶した断絶があるとしたら? その子が自分の最愛の人を殺したのなら? そういう意地悪なWhat ifの集積があの結果なのです。

自明として、所与として与えられている親子という関係性。その関係性を成す変数をひとつずつ微妙にずらしていき、もしもそれがスーパーマンであったら、という一種の思考実験。

この映画の持つポテンシャルは、多分思っているよりも大きなものだと思う。

だから、この映画から広がっていくユニバースがあるのなら、やっぱりちょっと期待したいのです。

 

MAFEXでフィギュア出してくれないかなぁ。

どうでもいいことですがあのノートが予言書みたいな感じ(というか予定表なのだろうか)だとしたら、彼は最終的に地球破壊光線を放つことになると思うのですが。