dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

20th century women

なんとなく自分の好きなものがこの年になってようやくわかってきたような気がする。

それが何かというと強さや理想だけじゃなく、弱さや脆さというものを当然のように描いていることなのかもしれない。つまり、リアルな存在としての人間が描かれているかどうか。マンチェスター・バイ・ザ・シーからの流れでこの作品を観て、そう思った。

もちろん、ファンタジーとしてのキャラクターだって大好物だし、プログラムピクチャーとかジャンル映画だって大好物ではある。そうじゃなきゃトランスフォーマーやら何やらのグッズでダンボールまみれになったりしないし。

しかし本作のパンフレットを買って読んだいま、あまり自分が書こうという気力はそこまで湧いてこない。というのも、1000円という値段に見合うだけの情報量がこのパンフには載っていて、自分の中でこの作品に対する気持ちというものが希薄になってきているからだ。感情とか感想って生ものだから、基本的には映画を見てすぐに書くべきなんですよね、本当は。午後ローを観たせいでごっちゃになってしまったとか朝一で見てきたから眠かったとか、そもそも映画を観たいという気分でもなかったという理由はあるんですが。パンフはあくまで参考とか答え合わせ的に使っていたんだけれど、内容盛り込みすぎてそれ読むだけでちょっと満足してしまったというかエネルギー持ってかれたというか。

 ただ、パンフの町山広美のインタビューを読んで自分が映画を観ていたときに思ったことを再確認できたのは良かった。それは何かっていうと、前述したことと少し繋がってくることでもあるんだけれど「生きた女性」を描くのがメチャクチャ上手いってこと。自分が思うに、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」と本作の違うところはまさにそこにあるんじゃないかと思う。「マンチェスター・バイ・ザ・シー」では「生きた人間」は描かれてはいたけれど「生きた女性」はそこまで深く描かれていなかったと思う。別にこれは悪いことじゃないし、むしろ性別というものに縛られることなくより普遍的な「人間」を描いたからこそ脚本賞を受賞できたんじゃないだろうか。要するに、深度というかピントの問題でしかないわけで、「20th」ではよりピントを絞って女性を中心に据えているというだけだし、こっちにしたって世界とのかかわりはしっかりと描けているから登場人物が少なくて家の様子ばかりが映し出されていても息苦しい閉塞感はない。閉塞感がないとはいっても、ある程度閉じた世界であることはそうなんだけど。

とくに生きた女性の描き方について感心させられたのが、女性から見たセックスと男。この作品は全体的に女性の視点から語られることが多い。それは主要登場人物の過半数が女性だからっていうことでもあるんだけれど、それがとてもフレッシュだった。多分、女性監督だったらここまで素直な女性像は描けなかったんじゃないだろうか。男女に限らず、男が男を描こうとするときに生じるノイズ(理想やあるいは諦観など)を持ち込んでしまうことが多いし、社会的に抑圧されてきた女性となるとそのノイズはやっぱり無視できないんじゃないかって思う。もちろん、それは男性が女性を描くときも女性が男性が描くときにも発生しうるし、801ってそういうことでしょう。だけどマイク・ミルズ監督は男の立場から女性を通して女性を見ているから、とても客観的に女性を見ていられるんだろう。インタビューに出てくるのも姉妹と母親の話ばかりだし、そういった身近な女性を生で感じてきたからこそ。父親はあんまり家にいることが少なかったと言っていたから、やっぱりそういう環境で育った監督ならではの視点だと思う。もしもこれが父親と険悪な関係だったとかなら、もっとそっちに寄った作品になっていただろうと思うし。

これは間違ったフェミニズムのように男性を卑下したりはしない。ウィリアムやジェイミーといった男性側の存在も描かれているし、各々の人物が各々の人物について語っていることで、自然とバランスが取れている。

正直、異性というものに一線を引いている自分にとって監督のこの作品はとても眩しく写った。フェミニストの皆さんは、この作品を観るべきでしょうね、うん。納得できるなら多分それは正しいフェミニズムで、そうでなければエゴイズムでしかないのだと築けるリトマス紙でもある。ぶっちゃけ、インタビューしてる町山氏も日本男性に対する偏見があるのですが、まあ否定できないことでもあるのでそこはあえて突っ込まずにおきましょうか。高校時代の自分はまさにそうだったし、今はその振る舞いが軽いトラウマになって異性に対して引いている部分があるのは事実だし。

パンフの情報は劇中で使われた音楽のことや79年の出来事とかが記載されているので買っておくべきだと思う。自分は79年なんてまだ生まれてなかったし、歴史とか政治経済の知識はかなり抜け始めているから、とても参考になった。ただ文字部分の紙質が安っぽいんだよー。1000円も出したんだから、そのへんはもうちょっとどうにかならなかったのかしらと。いやボリュームがあるのは承知してはいるんですが、紙質が揃ってないとなんか安っぽくなるじゃないですか、週刊誌じゃないんだからさ。実際、安いものじゃないし。

あとは役者さんについてちょっと書いておきます。恥ずかしながらわたし、この作品の役者さんをほとんど知らんかったです。辛うじてエル・ファニングってどこかで聞いたことあるなーと思ってたらダコタ・ファニングと勘違いしていたというオチだったし。彼女の妹だからニアピンではあるんですけどね。で、このエルさんがすごい身近な存在感を醸し出していて良かった。あんまり可愛くないというか、ぶちゃいく可愛い感じがすごいリアル。近所の友達ってこんなもんよねって。ダコタはハリポタでしか知らないんですけど、ああいう不思議ちゃん役の妹とは思えない地続き感(笑)

グレタ・ガーウィングの年齢を知って驚いたんですけど、この人の実年齢30歳超えてるんですね。劇中では24歳の役柄で全然違和感なかったんですけど、若いなおい。まあでもよく考えたら二十代後半のジャニーズとか普通に高校生役やったりしてるからナシではないのか。いやでもグレタはやっぱり若いですよ。見た目もそうだけど振る舞いとかちょっと不安げな表情とか、まさにそれですもん。ネオン・デーモンにも出てたみたいですね、この人。ネオン・デーモンは見ようと思ってたけど近所のシネコンでやってなかったから見逃したんですよね・・・今度観てみようかな。

さてさて、一応のアウトプットもできたことだしパンフを読み終えるとしましょうか。