カーペンターである。
映画が好きな人なら普通に知っているだろうが、一般層にまではそこまで普及していないだろうという絶妙にわかりづらい知名度の映画監督であります。
無論、わたくしも「ゼイリブ」「遊星からの物体X」「ニューヨーク1997(エスケープのほうはみていない)」など有名どころは多少は抑えていますが、改めて見るとこの人の作品はまあ面白いこと。音楽も自分で手がけているだけあって外していることはないし。音楽といえば結構印象的な音楽が使われていたなー。
というのが「ジョン・カーペンターの要塞警察」を見て思った次第です。
少し調べたところによるとリオ・ブラボーファンのカーペンターがオマージュ的に作ったという作品らしいのですが(西部劇が好きなことは知っていましたが、こちらは未見)、なんだか結構ホラー要素が強いぞこれ。そしてまた、どことなく黒沢清っぽいというかなんというか、音楽の効果も相まってすごく淡々としているのが不条理こそ条理というような前半部とか半端ないです。
個人的には篭城戦より前半部のすごく無機質な恐怖感がイイ。移動アイスクリームのミラー越しの車の行き来とか、ヌッと青年が現れるところとか。ストリートギャングのシーンはほとんどあますことなく怖いんですが、ストリートギャング四人のあの血の誓いシーンの血の通わなさときたら、逆に笑えてくるほど。ほとんどターミネーターとしか思えないですよねぇ、彼ら。
で、女の子が射殺されると。あれもかなりショッキングでしょう。もうホントこちらの常識というか道理を安安と踏み越えてくる無感動な殺人シーンは冷血としか言いようがありませんぞ。
女の子の父親に復讐されて仲間が死んでもうろたえるでもなくただ無言で追跡してくるところとか、いやもう本当に勘弁して欲しい。怖い。
警察パートとカットバックで描かれるんですけど、こっちがなきゃホントにただのホラー映画ですよもお。
で、そこから護送途中の囚人をチームに加えてストリートギャングの集団との篭城戦に発展していくわけですが、これも予算の都合なのか知りませんが淡々と死んでいくのがねー、もうこっちまで真顔で見るしかないんですよね。射撃する側の視点が介在することなく、ただひたすら撃たれて死んでいく側だけが映されるので(しかも派手な銃声はなくサイレンサーのプスッという音で)、こうなんていうか命のあっけなさみたいなものが浮き上がってくるのがすごく残虐。ほとんど暴力的と言ってもいい。
生き残る連中が揃いも揃って理性的かつクールでかっこいいのですが、カーペンター的にはそれこそが生存の力なのかもしれない。そういう意味で、惜しくも途中退場となったウェルズは多分に感情的すぎたのでしょう。いや、ウェルズも十分対応していたとは思いますが。
そのくせちゃっかり頭脳戦を論理的に描いてみせたりするクールさ、90分というタイトな作り。あと強い女性像。これは自分の中における女性像とすごくかぶるので親近感が湧いたりしました。
うん、これは傑作と呼んでもいいんじゃないかなぁ。
で、「ワイルドアパッチ」
こちらも予想外の傑作。
白人若年少尉とおっさん有能アドバイザーと有能アパッチの男(ケ・ネ・ティ)がの三者がともかくいい。いや、少尉は正直なところ最後までいいとこなしどころかミスってばかりで観ているこっちとしては腹立たしいことこの上ないんですけどね。
ただ、そのダメダメな少尉をサポートするおっさんアドバイザーことマッキントッシュが渋く銃の腕前が優れていて、少尉をサポートするのが観ていて微笑ましい。まあバート・ランカスターだしなぁ。
まあでもmvpはケ・ネ・ティでしょうね。同族を殺すというのに冷徹にただ仕事を実行していく。マッキントッシュとの言葉数少ないコミュニケーションとかもちょっとぶロマンス要素があっていい。あと長瀬くんに似てる。
しかも結構考えられた頭脳戦が観れるという。要塞警察といい今日の収穫は結構大きい。