dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

英製マイケル・ベイ

というほど支離滅裂だったりごちゃごちゃしているわけではないんですが、露悪的サービス精神とか「派手にいこうZE!」なノリが結構似ているような気がするのはわたしだけでしょうか。アメリカという国を批判するような内容を盛り込んでいたり(ペイン&ゲインでは自覚的であったことが浮き彫りになりましたが)

直前に観た「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」の記憶が吹っ飛ぶような(は過言だすが)痛快アクションでした。マシュー・ボーンの「キングスマン ゴールデンサークル」

 元々「キングスマン」は2015年映画で一番好きなスパイ映画(スペクター、ローグネイション、コードネームアンクルなどスパイ映画が豊富だった中で)で、ジャンルに絞らなくてもかなり好きな映画ではあったんですが、「キックアス」を見直してから今回の「ゴールデンサークル」を観ると素直に楽しみきれなかったりした。素直に楽しめなかったというよりは「別にいいんだけど、それでいいのか?」という意識的に無視して映画に身を任せれば気にならないようなレベルでありながら、唾棄したいわけでもないんだけど気になるというか。臭気を残すゼメキスとでも言えばいいのでしょうか。

とはいえ、この「素直に楽しめない自分」は難儀なやつなので所詮はマイノリティなレポートもといレビューではあるでしょう。熱狂具合を見ると。

 

その気になる部分はともかく、やはり映画としては抜群に面白い。 

まず冒頭のカーアクション。およそ3年越しの観客からしたら「誰だっけお前」とツッコミたくなるような敵のリベンジから始まり、そこから一気に車内戦闘+カーチェイスへと持っていく。この冒頭の掴みは「ベイビードライバー」のように音楽に合わせており、公式で推しているハッシュタグの「秒でアがる」というのに嘘偽りはない。

まあ、車内アクションは結構忙しなく、このシーンはカット割るわアクションカッティングでアングル変えて繋ぐわで分かりにくい部分がないといったら嘘になるけれど。分かりにくいといっても分からないというわけではなく、ましてベイのように訳わかめになるということでもない(TFなんて1カットの中で何がなんだか分らなくなるし)ので、下手に見やすくするというよりはテンション優先にしたのでは。車内戦闘であれば「アトミックブロンド」「デッドプール」の方がスマートで見やすくはありますが、冒頭の掴みとしてテンションを上げるには変に凝ってもらうよりは良いかもです。そういうウェルメイドな映画ではないですし。

ただ、マリカーも真っ青な超長い俯瞰のドリフトシーンが見れたので細かいことは目を瞑ることにしました。なぜかよくわからないのですが、あのドリフトシーンがやけに好きなのです。

「アトミック~」と書いておきながらアレですが、「キングスマン」に関してはそのアクションの方向性はむしろザックスナイダーの方に近い。近いといっても、ザックは「コミックの絵をライブアクションに置き換える」という指向であるのに対しマシューは「ライブアクションをコミカライズする」といったアプローチであるのでさらに分化しているわけで、この辺は個人の好みによるところが大きいでしょう。

日本で「キングスマン」が特に受けているのは、そういったアクションを含めた作風が全体的に「コミカル」であるからなのではないでしょうか。

 

まーぶっちゃけお話自体は前作とほとんどやってることは同じというか、敵キャラが違うだけで流れはまんまなのですが、新たなガジェットや組織というだけでわたしは脳汁が出ましたです。

今回の新ガジェットで言えば鞄を展開して盾にするのとか、あとは粘膜に発信機を付けるという、あのシーンをやりたいがための指サック(意味深)も潔くて笑えます。

今回の敵組織はサブタイトルにもある「ゴールデン・サークル」なわけですが、これはもちろん南北戦争時の秘密結社の名前から取られているわけですが、南部奴隷支持派の組織でkkkの前身であったという説もあることから、トランプの当選によりにわかに息を吹き返し始めたkkkに対応させていたりするのでしょう。というのは深読みかもしれませんが、今作のアメリカ政府の描き方や麻薬の扱い方などを見るとやはりアメリカに対する嫌味のようなものは受け取ってしまう。

まさかアナルファックから始まった恋が続編で純愛にハッテンしているとは思いませんでしたが、キャラを使い捨てていないという部分で好感を持つべきなのか殿下の股下のユルさに笑うべきなのか、サウスにおけるカナダ的な扱いなのかとか、殿下のハッパシーンとか見てると考えてしまう。

そういった露悪的な笑いどころはたくさんあるんですが、なんといってもアクションでしょう。アクションに継ぐアクションで(お話を犠牲にして)テンポよく進んでいきますし洒落たトランジッションでシーンを繋いだりと随所に工夫が見られて、やっぱり観ていて楽しい。

白眉はやはりラスト(敵の本拠に攻め入るというところを含めるかどうかはありますが)の緩急のついた一連のワンカットアクションでしょう。「アシュラ」のカーチェイスを見ていても思ったことですが、これって撮影とかどうなっているのかわからないくらいシームレスでビビります。ミンチのオチに持っていくために位置関係も考慮しながらアクションを見せなきゃいけないわけで、それだけでもかなり大変なことだと思うのですが、「バババッピタッバババ」と擬音で表現したくなるジェットコースターアクションはともかく楽しい。

これだけで「あー楽しかった」と満足して帰ることができる。

 

というわけではない。

前述のとおりいろいろなところに「それでいいのか」と思う部分があります。

まず脚本。曲りなりにもスパイ組織なのだから、車内に残ってる敵の部品(しかもかなり大きい)くらいは処理するとかないんでせうか。「最後のジェダイ」でファンがぷんすかしてた理由がわかった。ていうか、それ以上に「スパイ組織」なんだから尚更間抜けに見えちゃうんですよねぇ。

あと前作と同じ「味方の中に敵がいる」というのも、もうちょっとひねりを加えて欲しいところですし、その獅子身中の虫の扱い方が雑(そもそも、どうやって彼が敵だったのか気づいた理由ってはっきり明示されてましたっけ・・・?もしかすると自分が見落としただけかもしれませんが)。

これに関連して、全体的に主要キャラクター以外(主要キャラでさえ)の扱いが雑。なだけならまだしも、切り捨て方があまりに無頓着すぎる。

だから「仲間の犠牲」なんていう重要なイベントを考えなしに2回も1作品の中で披露できちゃうんだよ(しかも2回目のほうはなくても全く問題ないという)。エグジーくん、ロキシーと親友と愛犬が殺された直後は「許すマジ」みたいな顔してましたけど、その後のシーンでは割と余裕かましてましたよね。愛犬にいたっては同じ犬種ならそれでいいのかよっていうね。犬の扱いに関しては「ジョン・ウィック」を見習って欲しいですな。

ともかく「キックアス」の時点で「敵を殺す」ということへの無頓着さが出ていたりはしましたが、まさか「味方の死」まで体のいい踏み台にするとは思わなんだ。いやほんと、話の流れとしてはキャラクターのエモーションが沸き立つはずなのに、肝心のそのキャラクターのエモーションの描写がなさすぎて形骸化してるんですわ。

あのですね「人がゴミのようだ」という描き方はありますよ。北野映画なんてまさにそれですし、それゆえの楽しさもあります。しかしマシュー・ヴォーンの作品は大概がそのあたりちぐはぐになってしまっているせいで気持ち悪いんですよね。

この辺はマイケル・ベイのほうが上手ですな。というか、ベイは結構たけし寄りだと思いますし、エロとかキスとかの演出はもはや悪意でやっている節がありますから、無頓着なヴォーンとは違う。

あと散々射殺しておいてメインの敵を殺すときだけは「紳士に反するが」ってちょっと。美味しい場面のときだけダブスタ発動はいかんでしょうよ。「マーリンを殺したから」っていうのを根拠にしていますけど、その前に散々殺してるよね君。それともあれですか、実はあそこで倒した敵は全員生きてるんですか。

ていうかマーリン死ぬ必要まったくなかったよね? 思わせぶりに実戦投入してその展開って、あれですか。次回作に向けて少しでも制作費を削るためにメインキャスト殺しておこうって算段か。という邪推をしたくもなる。

 その割には、やっぱり物語上必要のないコリン・ファースを再登場させてチャニング・テイタムは本当に顔見せだけという有様。アメリカに対するあてつけだとしても、それはさすがに・・・ていうか本当にあてつけだった引きますけど。

いや本当、コリン・ファースじゃなくてテイタムとタッグ組ませれば良かったでしょうよ。

 

そもそもそういう部分に無頓着なのでしょう。

 「ファーストジェネレーション」はそういうのあまり気にならなかったんですが(見返してないからもしかすると、ということはありえますが)、あれはある程度の流れが決まっていたり原作のパワーが監督をある程度抑えたから優れた演出が際立ったのかなぁ。

 

そんなわけで「滅茶苦茶おもしろいのに結構モヤモヤする」映画でした。

 

 

あと録画してた「めめめのくらげ」「ファントム」という映画を見ました。

「めめめ~」は西村喜廣の仕事とCGらへんは評価してあげていいと思う。それ以外はほんとうになんていうか、いたたまれなくなるんで。窪田くんとか染谷くんとか、なんで君らこんな映画のこんな役で出てるん?って思わず画面にツッコミ入れたくなりました。

「ファントム」はなんというか、自主制作ならかなり見ごたえある映画といった感じ。