オウム真理教幹部の死刑執行、あるいは白人警官による黒人殺害に連なってくる映画をこのタイミングで放送する午後ローの敏捷性は計り知れない。
狙ったのかどうかはさておくとして、午後ローはB級映画だったりを流すくせしてこういうところがちゃっかりしている。
イーストウッドが主演・監督を務めるイーストウッド映画である。
本当は7月のまとめの方に入れちゃおうと思ったんですけど、最近は月ごとにまとめられるほど本数を見なくなったのであれはやめようかな、と思い始めていまして。まあそれとは関係なしにちょっと個別に扱ってもいいような内容だったので。
イーストウッドの映画を、このブログでは何回か扱ってきてはいますが、やっぱり毎度面白い。
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イーストウッドの映画を扱ったのはこんなところでしょうか。
往々にしてこの人の映画は理性的というか泰然自若というか、中庸な感じがするのですが、「トゥルー・クライム」でもそうでした。
お話そのものはフッツーのサスペンスなんです。けれど、そこに白人と黒人という要素が入ってくることでアメリカ社会の病理が浮き彫りにされてくる。
冤罪とか差別とか、そのへんを直接的に扱っているというよりは娯楽の中にそれとなく(というには明瞭すぎるけど)落とし込んであくまでわかりやすいエンタメ路線であるので見やすくはあります。
しかし、劇中でも言われているとおり本作のイーストウッドはクズです。屑ではなくクズ。これまで観てきたイーストウッドはアウトローな「屑」でしたが、この映画では女ったらし路線で仕事を優先するあまり娘に怪我を負わせる系の「クズ」です。午後ローカットのせいなのかオリジナルの演出がそうなのかわかりませんが、娘へのフォローが一切ないあたりがなんとなくらしい。
イーストウッドの映画って、なんとなく止揚感があるのですよね。基本的にイーストウッドが聖人君子を演じることはなくて、むしらダーティさでもって正しいことなし、それによって清濁併せ呑みアフヘーベンしますた。的な。
イーストウッドは瞑想とか仏教思想に傾倒(とまで言っていいかはアレですが)していますから、明確な善悪みたいなものに対する拒否感みたいなものがあるんだと思う。だからクズではあるけどそのクズっぷりに直結する真面目っぷりでもって人を救うわけですし。
どうでもいいことですが、ラストのルーシー・リューはなんだったんだろう・・・。
あと岩崎ひろしを牧師とホームレスに割り振るのはやめてください。ギャップで笑い死んでしまいます。