dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

オンライン試写

オンライン試写会という奴に当たったので、家で映画を観る。

今回のは7分ほどの短編と長編1本というプログラムでござんした。まあ映画館で観るのとでだいぶ印象は変わると思うのだけれど、手間はかからないから楽ではある。

 

短編「くじらの湯」

短編アニメーション。

なんか凄いものを見てしまった気がする。

いや、日本映画に詳しいわけじゃないのでなんとも言えないのですが、実のところ女湯というものがここまでてらいなく描き出されたことってあまりないのでは?(しかもサウナまで!)男湯なら割と観る気がするのですけど、それにしてもここまでのものはない気がする。

女性が見ればあるある、男性から見ると未知の領域なのかしら。まあでもサウナ入ってるときの姿は男女問わずあんなものでしょう。サウナとかほとんど入ったことないですけど。銭湯も、そういえば近所にあった銭湯が数年前に潰れたちゃったっけ。
そう考えると、なんだかあのアニメーションのダイナミズムというのも妙にセンチなノスタルジーを惹起してくれるような気がする。

本当に、あそこまでてらいなく(これ重要)女湯と女湯の中の女を描かれるとそれだけでかなり圧巻(そのくせ妙にリズミカルなのが笑う)で、あの幼女の気持ちもわからないでもないというか。

ああいう他人の裸などというてらいのない他者の姿を見ることができるあの空間を、あのてらいないアニメーションで表現するっていうのは相性として抜群なのですなぁ。

 

 

 

「アボカドの固さ」

すごい。びっくりするくらい何も起こらない、窓辺系の映画でござんす。

そんで主役の前田さんが有田に似てる。くりぃむの。めっちゃ似てる。あとムロツヨシ。二人を足してくりぃむ上田の頭髪でわり算したような。

 
5年付き合った彼女に振られて未練たらたらな男が未練たらたらなままひたすら変化など起こさない終わるという。
 
じゃあまったくつまらないのか、というと、まあ個人的には何か所か笑ってしまうシーンもあったので、つまらないと言い切ってしまうことはできないんですよね。主人公がナチュラルにクズなのに、そこに自覚がないのとかも(人によっては苛々すると思いますけど)笑えましたし。


別れたあともああいうフランク(に振舞おうとしている)な関係性というのが有効なのかどうか知りませんけど、別れて数日後?に二人で飲みに行くシーンがあるんですよ。

このシーンの「居酒屋閉まっちゃってるね」からのくだりの居た堪れなさというか、主人公のポンコツっぷりは笑えます。
そのあと、彼女の方だけカメラからフェードアウトするんですよね、ちょっと。またすぐカメラに収まるんですけど。
ニトリで家具見てるときは二人の歩みはまあ揃っていたしカメラにもしっかり収まっていただけに、この関係性の崩れた感じが観ていて面白い。ニトリではフィックスだったけど、分かれたあとは手持ちでカメラ揺れてるしどんだけ動揺してるんだよ、というのが笑える。
 

そこからのハグ攻撃からのシミちゃんのATフィールド。まあこの辺からだいぶ主人公の行動が怪しさを帯びてくるんですけど、アボカド持った当たりのナチュラルにマッドな演出はさすがにこらえきれず爆笑しました。いやどんだけ引きずってるのよと。妄想の重ね掛けはヤバすぎて笑える。


で、仕事相手(CMディレクターかな?)の女性と良い感じになるんですけど、ここでもまた主人公のナチュラルクズっぷりと元カノへの未練が噴出します。
いやもうね、まず告白が不意打ちすぎるし、第一元カノについてのあのうざったすぎる話をされた流れて告白って頭おかしいでしょう。
案の定拒否される(というか彼氏がいると言われていて、にもかかわらず告白するという暴挙)んですけど、拒否された後の行動もまあクズ。
元カノに電話しろっていわれて半ギレになるのはまだ百万歩譲っても、そこからの人格批判からの創作物批判(しかも自分が出演している)というすさまじいまでのクズな立ち振る舞い。そこで逆切れしてとんずらこいたかと思えば直後にデリヘル呼ぶという。

デリヘル側はリップサービスのつもりで会話してるのにコミュニケーションが下手(多分本人はそこに自覚がないという恐怖)なせいで「何歳に見える?」に対してリアルに年齢をあてに行くのも本当にヤヴァイ。サービス業の人のリップサービス真に受けちゃってシミちゃんち行っちゃうし。
シミちゃんのお母さんもすっとぼけた感じで変な空気作るし事情知らないみたいだし。

しまいには花屋に因縁付け始めるし、小学生並みの「何で?」攻撃とか、あんなクレーマーって結構いるのかしら。そもそもサンダーソニアがなかったからより戻せなかったわけではないのに、花屋さんが哀れすぎる。
いや花屋さんには悪いと思いつつあまりに身勝手すぎる行動に笑っちゃうんですけれどもね、ええ。

そうこうしてたらなぜかシミちゃんに呼び出されるし。かといって何か起こるというわけでもなく。
別れ際のタクシーのところは「あいのり」の告白シーンな台詞の羅列で笑っちゃいましたし、全体的に笑って観ていたんですけど。

にしても、最後の家具のくだりの演出の意図はわかりますけど、そういう問題じゃないから。主人公のあれはそういう問題じゃないので、あれ完全にヤバい人なんで。


しかし散々指摘したそのヤバさクズっぷりというのは極めて日常風景のもので、はっきり言って映画で観るにはあまりに逸脱しなさすぎて退屈ではあります。アボカドのくだりだけはナチュラルに狂ってて面白いんですけどね。


映画で見るようなクズではなく、現実に、そのへんにいそうな卑近なクズっぷりであり、それ自体には笑えるのだけれど、それは映画として収めるには弱すぎるきらいが。だから私が笑ったというのも映画的どうこうという部分とはまったく別で、むしろそういう人間の生態を集めた映像集的に楽しんでいた、ということではあります。

まあ一切の成長を見せずにあそこまで身勝手に閉じようとしている、というのはこれが主人公の妄想というアレで決着していたりすればそれはそれで突き抜けられたかもしれませんけど。