最初に日本で情報出てから2、3年経ってるような気がするのですが。
公開までだいぶ時間かかったせいですっかり失念していました。
だって日本で昨年末に公開した映画の予告編に同スタジオが今年公開する映画の予告編が流れてましたよ。と思ったら18年にネットフリックスで公開してたんですね。
「生きのびるために」から劇場公開にあたって「ブレッドウィナー」にタイトル変更されてたのもあって、全く気付かなかった。ややこしや。
というわけで「ブレッドウィナー」観てきました。同時上映で「レイト・アフタヌーン」という短編もありました。
何気に日本で公開しているサルーンの映画は全部観ているのですが(まあ2本だけだし)、いかんせんそれほど記憶には残っていないしどの映画を観ていてもまどろんでしまう(今回もそうだった)というのに、なぜか懲りずにまた観に来ているのは、単にタイミングの問題でしかないのだと思いたい。
とはいえ、今回はちょっとこれまでのに比べると毛色が違いました。
「おとぎ話とナラティブ」という部分では通底していますけれど、実質「アクアマン」だった「ソング・オブ・ザ・シー」や牧歌的な児童小説然としたたたずまいの「ブレンダン~」と比べるとずいぶんバイオレンスでございますし。まあ同じシステムを使っていても監督が違うので当然と言えば当然なのでしょうが。
とはいえあまりに直接的な描写はありませんが、しかし流血はあるあたり、インタビューでも答えていますがその辺のバランスは結構気にかけているのは伝わってきた。
児童小説が原作ということですが、割と生々しい描写があるんですけどこれは原作から持ってきたものなのだろうか。いや、あったにせよなかったにせよ、それを投入してきたということは描かざるを得なかったのだろう。
そんでもって原作の出版が2000年というのにも驚く。20年経ってもまだこの映画で描かれるような世界が厳然とあるというのがなんともはや。
これは結構重要な問題で、要するに原作は9.11以前のアフガンを切り取っていたわけですが、この映画は否応なく以後の話でしかありえなくなった以上、どうしても影を落とさないわけにはいかなかったのだろう。そのような欺瞞で誤魔化せるようなものではないのだから。
戦争、飢餓、女性だからというだけで抑圧を受ける(あそこまでひどくなったのはここ数十年らしいですが)差別構造。それらを寓意するおとぎ話も、その本質は死者の慰めにほかならない。
希望、などとはおいそれと口にできない。なんだか気の滅入る一本だった。
これ、短編の方を後に流してくれたらもうちょっとすっきりしたのに(笑)。
短編の「レイト・アフタヌーン」は色彩といい身につける強い色の物体の線の脈動といい、ボケた母親の心象というモチーフとは真逆の生に溢れた優しい映画でございましたから。
とはいえ、こっちもこっちで結構アレで、徹底して少ない線で描いていたと思いきやおばあちゃん(というかお母さん)が一瞬、我に返った瞬間の彼女の両手の皺の数がめちゃんこ多い。そういうジェットコースター的な落差による絶望もありつつ、最後には優しく抱き留めてくれるそんな短編。
まあ、あれくらいなら全然軽度だから見れますけど、観る人が見たら「欺瞞だ欺瞞!」と言われても文句は言えない。それくらいまごころに満ち溢れている。