dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

2023/2

「幸せなひとりぼっち」

ありがとうトニ・エルドマンにも似ているような、しかし何かこう、向こうよりも愛嬌があるというか。まあツンデレじじいの話なので普通にかあいい。

 

「映画大好きポンポさん」

10年代後半だろうか。映画語りマンガが増えだしたのは。pixivのマンガが原作ということもあってこの映画もその手のマンガの一種だと思っていたのだけれど、私が読んだことのある映画語りマンガとはちょっと違う感じで、映画の内容そのものを語るというよりも映画作りについて語る映画でした。例の如く原作未読ですが、このアニメの映像の質の高さに関しては見解が一致するのではないだろうか。

それこそ、こと絵的な美麗さだけを切り取れば新海誠以後に雨後の筍のようにぼこぼこと生えてきたアオハル系の映画よりもその系譜に位置づけることすらできるのではないかとすら思う。

やや情報量の少ないデフォルメの強めなキャラデザにそぐわぬ繊細さ・綺麗さを筆頭に、アニメーションの質自体は総じて高い。映画製作それ自体をそのまま映像にしたらかなり地味な絵になるだろうし、それこそドキュメンタリーという形以外で捉えるのは割と難しいような気もするのだが、アニメにおいてはそこをどれだけ過剰に盛り込んでも許されるため、特にカッティング場面などのダイナミズムはテンポもよくて観心地は良いし、シャレオツな字幕演出やトランジッションも上手い。背景や色彩全般、キャラの輪郭線の強弱や色味にいたるまでかなり練り込まれているので、確かに観ていて退屈さを感じることはないんじゃないかと思う。

一方で、これは作り手の意図したものであることはほぼ間違いないのだけれど、それは極めて現代のタイパ・コスパを意識した造りであり、裏返していえばコマーシャリズムの連続という風にも見えてしまう。編集のテンポの良さ、というのも多分にそういった部分がある。

そして、描かれる内容も、受け売り的で一義的であり、演出だけでなく話そのものもMVぽいというか。アップルとかあの辺のおしゃれな広告センスでリクルートとかあの辺の就活・人材派遣とかの企業のコマーシャルをしているというか。嫌味として「ハイセンス」という言葉を使いたくなるというか。

映画の作り手がこの映画を観てどう思うのかはわからないけれど、どうしても広告的なんですよね。広告的というか、プロパガンダ的といった方がいいだろうか。しかもその喧伝性というのがどこか受け売り的。

オチとしてもこの映画のランニングタイムの仕掛けにもなっている映画の長さについて劇中でも言及されてるけど、それもなんかどっかで聞いたような言い回しで。こう、映画制作にまつわる本とか、映画秘宝とかに書いている人がキッチュだったりキャンプな映画を褒めたりするときに使ったりしそうな。てかロジャー・コーマンだろ。

いや、私も長い映画は結構辛いし「ニューシネマパラダイス」も好きではないのだけれど、あれを揶揄するシーンを創作物の中で見せられるとそれはそれで「あ~やっちまったな」というのもある。単に私があまのじゃくなだけでもあるのですが、しかし観客としての自意識が「こっちみんな」と訴えてくるのですな。

どうでもいいが、目が死んでるやつが云々とかのある種の作家主義偏重な視線というのもどうかと思うんですよねぇ。それでいったらポンポさんは目がイキイキしてるし、そのいかにもクリエイター()が自虐風自慢的マウンティングに用いり悦に入ってそうなロジックを語るのであれば、そしてハリウッドをモチーフにした世界を描いているのであれば「映画スター」という存在に意識を向けなければだめだろう。

つまり、観客の欲望の入れ物としての、空疎ながらんどうとしての映画スターという存在を。だが、この映画で世界一の俳優(世界一って何だ?)として出てくるマーティンにそのような視線は注がれない。

 

私がこの映画をプロパガンダ的と言っているのは映画制作(製作)を美化しすぎだから。そこに立ち込める欺瞞さが、メガバンク勤務のアランとの対比のせいで更に拍車がかかる。特に融資会議のシーンは鳥肌立ちましたよ、悪い意味で。いや、社内会議を秘密でブロードキャスティングしてるとかまず信用されないだろそれ。どう考えてもアンチヒーローな奴がやる所業だよそれ。銀行マンならレトリックで勝負せんかい!

あと土下座嘆願って、向こうの文化圏で見られるのでしょうか?そもそも劇中の世界はアメリカじゃねぇ、と言われてしまえばそれまでだけれどハリウッドモチーフなんだからそこで土下座というアジアンな文化をもろに白人がやるというのは些か奇妙ではないだろうか。

というのもそうなのだけれど、劇中劇の「MEISTER」という映画について……というかこの劇中映画の制作過程における語り口のそれは、もちろん予算やらデフォルメやらの色々なことを考えればアニメじゃないとできなかったと思うけれど、アニメでやるべきじゃなかったと思う。

なぜなら俳優への当て書き映画(特に本作のように新人発掘という体裁)というのであれば、そこにはキャラデザにも声優の演技にもそれだけの説得力を持たせなければならず、それを俳優の身体性を欠如したままに進めるというのはアニメという形式ではかなり困難だと思うので。実際、あのへなへな演技で光るものがあるとか言われても。ポンポさん、やっぱり目が生き生きしてるし創作者としてポンコツなのでは…?

あとこれは当てこすりですけど、音楽家を題材にした近作で比較すると「蜜蜂と遠雷」の到達した地平に届いてすらいない程度の劇中劇クオリティ。ていうか、ジャンル映画を称揚するのであれば、ジョー・ダンテが「マチネー~」における劇中映画「MANT!」をマジで20分の短編映画として作っちゃったくらいの作りこみの勢いでIKEA。というのはさすがに酷だけれど。

 

そもそもこのアニメの監督、ゴッドイーターのテレビアニメシリーズの時にクオリティのために放送延期させたことがあるので、なんかこう、自己弁護的にも見えてしまうんですよね。まあそれで良いものが見れるのであれば一般観客・視聴者としては良いんですけど、しかしその熱量と意気込みで全てが許されるというのは、最後のアカデミー賞パロもそうだけれどMeToo以後の現在位置から見るとうすら寒いものを感じる。

まして園子温の一件もあったし、その上告発した女優が最近になって自死してたこととかも考えると、そういう「モノづくり」に傾ける熱意や熱量というものが純粋でありそれによってすべてが許されるという価値観を通底・温存・補強しようとし、それによって現実を捻じ曲げる欺瞞さはぶっちゃけ鼻につくのです。

 

ハッキリ言って、映像的なクオリティは高水準だし技巧の高さは買うけれど、逆に言えばそれしかない。その中身は退屈だし前時代的とすらいえる(ハリウッドに向ける視線も)。アニメとしてのクオリティが高いので、その点だけをもってして評価することは全然可能であるというのがまた質の悪いところなのだけれど、映画製作の苛烈さも欺瞞性も排除しているこの映画の欺瞞に物足りなさを感じている人は、エイリアンシリーズのメイキングを観るか、傑作ドキュメンタリーの「ナイト・クルージング」を見た方がいい。

 

 

「フレンチ・ラン」

イドリスかっこよくて程よくポンコツで可愛い。

 

崖っぷちの男

あんま評判良くないようですが、自分はそこまで嫌いじゃない。いや、まあまあバカバカしいのはそうなんだけれど、バカバカしいなりにすごい頑張ってるのがわかるので。

タイトルなんだそりゃ、と思ったら原題直訳でさらになんかほっこりした。

 

トムとジェリー

ああ、なるほど、という感覚。現代の「MASK」といった感じ。

 

小説家を見つけたら

タイピングのシーンでジャジーなBGMがかかってそのシーンだけで終わるの即興感があって良い…。

しかしなんと言うかこう、お手本のような脚本というか。

 

地下鉄のザジ

シュールでスラップスティック。ともすればトーキー以前のチャップリンとかの動きをを思わせる。冒頭とラストの列車からの風景の、まったく日本のそれと大差のない感じがすごい驚いた。この映画で一番驚いた部分といっていいかもしれない。

「White eye」

何気にワンカット。常に体温のぴりついた感覚が張り詰めており、それがワンカットの緊張感とマッチしている。そして大きな悪い出来ごとがあったわけではなく、ただただマイノリティという立場と、ある種の「悪の法則」的…というと大仰だが、しかし画面上には映らないか確かに存在する悪意による巡り合わせが嫌〜な後味を残す。

 

「Next Stop」

えぇ…?優しい世界にしても、いくらなんでも生なるすぎやしないだろうか。

 

「乱」

赤い。ともかく赤を基調とした色彩設計が凄まじい。旗の赤、血の赤、夕焼けの赤…ともかく赤い。個としての赤色が最終的に世界そのものへと敷衍されていく過程であり、それは「赤」という色が想起させる悍ましいものの正体そのものでもある。

とにかくまあ規模に見合った壮大な絵面が目白押しなので、単純に観ていて飽きない。物語のグロテスクさとはつまるところ人間の精神的な卑しさのそれであり、画面上では戦争によって引き起こされた人体の欠損や見るも無残な死体の群れが全面展開され、身体(という五体満足の完全性の不完全さ)のグロテスクさがあけすけにされる。

絵面でいえばワダエミの衣装デザインが受賞したのも頷ける。

しかし面白い。

狂った世の中で気が狂うなら気は確かだ!

これ系のセリフのオリジンてもしかしてこれなのだろうか?