dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

ブラックコメディとしてはそこそこ楽しいけれど・・・

「サバービコン 仮面を被った街」を観てきました。

本当は「アイ、トーニャ」が観たかったんですが時間が合わなかったので延期。代わりに、といってはアレですが、そこまで観たいわけではなかった「サバービコン」に切り替える。BS海外ニュースでジョージ・クルーニー監督、マット・デイモン主演で映画を撮るというのは結構前から知っていたんで気になっていたといえば気になってはいたんですが、優先順位的にはそこまで高くなかったし。

 

相変わらずダサい副題をつけるのが好きですねー日本の配給は。映画で描かれてるかぎりだと街というよりはむしろ家族なわけですし・・・ってこれネタバレだろうか。かなり序盤で種明かしされるとはいえ(そしてそれゆえにやや物語的な牽引力を弱めているような気も)、「あ、そういうことだったのか」となる部分はありますからね。
ここではネタバレなんて気にせずつらつら書いていきますが、もし見る人がいたらなるべくネタバレは回避したほうがいいと思いますですよ。

率直な感想としては「予想通り予想を超えてこないダメよりなフッツーの映画」ではあるかな、と。あーでも、製作陣がセーフをかけてる気はするけどなにげにグロだったりエグい場面があったりするので、そういう意味では楽しい部分もあるんだけど、結局のところは全体的にとっちらかったまま終わったという印象。
元の脚本がコーエン兄弟だけあって、そこそこサスペンスな部分はあるんだけど、黒人差別の部分とかは前時代的というか、やっぱり脚本が書かれた80年代のうちに映像化しておくべきだったなーとは思う。ただコーエン兄弟が映画化しなかったのは、やっぱり脚本に納得行ってなかったからじゃないかなー。「デトロイト」のように実際の出来事を巧みな演出で再現し再考させるというものでもないし。一応、本作も50年代の実話をモチーフにしているという話ではあるようですが。街ぐるみの黒人差別をちゃんと描ききれていない割にそっちにやたら尺を割くんだけど、メインとなるデイモン一家の話とまったく絡まないのが痛いですね。サバービアの嫌な感じだったらよっぽど「トゥルーマン・ショー」のほうがいいかなー。

演出的にも、説明的な映像がちらほらあったのが痛い。黒人一家が白人だけの街であるサバービコンに引っ越してきたところから始まるんですが、黒人の一家に手紙を届けにきた郵便屋さんの態度が表情の機微や手紙を渡しそびれる=黒人は召使いという認識を持っているといった部分を描くのは(やや戯画化されているきらいはありますが)いい感じなんですけれど、そのあとに街の集会所みたいなところでホワイトトラッシュガイズが集まって黒人がいるではないかとやいのやいの言って、黒人一家の家の周りに柵を立てるということを決めるのですが、ここ入れてしまうのはスマートではないですかね。
あそこは丸々カットして、いつのまにか家の周りに柵を立て始めているというふうにすればもっと気味悪くできたのでは、と。

ほかにもちょいちょい黒人差別の描写は出てくるんですが、描くだけで終わってしまっているので、物語に直接関わってこないのであればそういう描写を背景的に描くだけにとどめるべきだったのではないかなーと。
てっきり黒人との友好を結んだ息子だけが生き延びるというような展開かと思ったら全然そんなことはなかったし。

 
ジュリアン・ムーアのバカっぽい演技とかマット・デイモンが夜道を幼児用自転車で漕いで行くのは面白いんですけどねー。地下室で卓球ラケット持ってジュリアン・ムーアスパンキングしながら立ちバックするところを息子に見られたりするシーンなんかもまあ普通に笑えましたし。部分部分で笑えるところはあるんですが、やっぱり単一の作品として見た場合はちょっと首を傾げざるを得ない。

殺された母ではなく殺した側の叔母が黒人の子と遊ぶように促したおかげで息子が拠り所を失わずに済んだというのは、皮肉じみていてそれなりに納得はいくんですが、どうせならマット・デイモンに息子を射殺させてから夜が明けたら毒でデイモンも死んでいてロッジ一家全滅みたいにしたほうがよっぽどブラックコメディ的ではありますけんどね。ギャグ日の「アンラッキーシリーズ」みたいに。

 

 総評としては、面白い部分もなくはないですが、トマトの評価通りの出来栄えだとわたくしも思いますです。
どうでもいいですが製作総指揮にジョエル・シルバーがいるというのが地味に笑えました。