dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

クソ野郎の感想

そういうわけで告知(?)していた「クソ野郎と美しき世界」の感想を書こうと思うのですが、その間に「ペンタゴン・ペーパーズ」観に行ったり別でやることがあったりしたり高畑勲関連のツイートをリツイートしまくって感傷に浸ったりしていて、ちょっと整理できていない状態なのですが、まあBSで観たやつもまだ下書き状態だったりして、これ以上溜め込むと進研ゼミ状態になりかねないので無理やり書く。

いつもよりかなり雑になるやも。

 

これといってスマップに思い入れがあるわけではないのですが、2週間限定上映という売り文句に惹かれてまんまと観に行ってきました。THXで観たんですけど、イマイチ違いがわからんかったです。箱はでかかったけど。

まあ園子温とか好きではないですが気にはなりますし、爆笑問題太田光のラジオは好きだしこの人の撮る映画ってどんなんだろうと思ってはいたので当初から観るつもりではいたのですが、ということは付け加えておきますか。えー本編とは関係ない部分ですが、わたくしが観たところではアス比の調整がミスっていたのか時々出る字幕が読めなかったです。文字の上部しか画面上に出ていなかったり逆に下の部分が埋もれていたり・・・イオンシネマさん、しっかりしてださい。

 

で、本編。
オムニバスだし監督も4人いるのでそれぞれについて綴っていこうとは思うのですが、一つ通底しているのは間違いなくスマップ・・・もとい新しい地図の(アイドル)映画ではあるということ。もっとも、はっきり言って万人に向けたものではないとはいえる。そもそもオムニバス形式というのはともかくとして担当する監督が園子温太田光という時点でね。しかし太田光の映画が一番わかりやすいという。

それでも、この企画は事務所に縛られていたスマップ時代では無理だった企画ではあるはずなので、スマップメンバーではなく稲垣吾郎・草彅剛・香取慎吾という個々の新しい側面は観れたと思います。


「ピアニストを撃つな!:園子温

 いつもの、つまりハイテンションな方の園子温映画ではあって、こんな企画でも(だから)ブレないな、と。タイトルはトリュフォーの「ピアニストを撃て!」のパロらしいのですが、こちらは未見につき接点とか共通点とか何言えないのでノーコメント。
時系列いじってくスタイルは園子温のほかの作品でもあったんですけど、今回もちょっとそんな感じの編集してますね。個人的にはアメコミイジりが面白かった。イジリって言っても直接的な台詞ではなく絵ヅラ的な部分。まず浅野忠信のマスクはどう見てもダークナイトシリーズのベインだし、部屋に大きく張られている蜘蛛の巣はスパイディだろうし、満島真之介のメイクはスースクのジョーカーを意識しているのだろうし。嗅覚のくだりなんかもアメコミの特殊能力の揶揄みたいな部分がありそう。あと、走ってる途中で浅野忠信が髪をかきあげるんですが、そのあとの髪型がすごいヒュージャクのウルヴァリンみたいなんですよね。

というのも、この人はいわゆる昨今のヒーローユニバース的なものをやや批判的に捉えているような感じが「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」のコメントなどから読み取れたりする部分があったし、そういう考えを持っていてもおかしくはないだろうな、と。

このエピソード自体はかなり「振り」としての側面があるような感じで、全体的にコミカルに仕上がっているので実は園子温のこのエピソードが見やすかったりするのではないだろうか。

あとスプツニ子が出ていて笑った。最初シェリーかと思ったんですけど、シェリーにしては演技が抑え気味(達者ということではなく)だなーと思いつつ誰だっけーと頭をひねってクレジットを観て思い出すという。

肝心のゴローちゃんですけど、実はゴローちゃんってキムタクしか演じられないキムタク以上にゴローちゃんであることを払拭できないんじゃないかなーと思った。それがプラスに働くかマイナスに働くかは使いどころ次第ではあるのですが、優雅というか余裕な部分を常に放っているというのを、このエピソードでなんとなく思った。
あと満島真之介。この人の躁なヤバさは本当に笑う。
 

 

「慎吾ちゃんと歌喰いの巻:山内ケンジ

これが一番好きなエピソードでしたね。
まず慎吾ちゃんの現状というか置かれた状況を端的に示しつつも少しギャグっぽく落とし込み、最後の「新しい詩」に繋がっていくのが構成として地味に上手い。
歌喰いっていう設定がすごくこう、歌いたい歌を歌えないっていう部分が事務所とかの関係で本人はそう思っているんじゃないかなーと思って泣いた。で、この歌喰いを演じる中島セナちゃんがすごい。12歳くらいなんだけど年齢不詳感がすさまじく、この歌喰いというキャラクター(というかほぼ設定)のミステリアスな存在感への裏打ちがされている。実際、観ていて20前後くらいかと思っていたので実年齢を知ってびっくりした。

話もそうですけど演出とかも含めて世にも奇妙な物語のライト寄りな話にありそうだなーと。壁に婦警の顔が投影されて会話するのとか。歌を喰って生きている歌喰いの設定は割りと現実離れしているのに、食ったらしっかり排泄するという部分が妙に地に足ついていて、その排泄物を食べると喰われた歌を歌えるようになるのとか、排泄物であることを隠して古舘寛治に食わせるのとか、シュールな笑いで満ちていて面白い。慎吾ちゃんのどことなく病んだ感じと中島セナさん(ちゃんだと逆に変な感じするので)の現実離れした出で立ちが、妙にマッチしていて、深夜の5~10分ドラマでずっと観ていたい。で、慎吾ちゃんの書いた絵に宿る歌を全部喰ってしまい、それをトイレに排泄したところを慎吾ちゃんが覗き込んでこのエピソードが終了するわけなんですが、それが最後のエピソードで回収されます。
 

「光へ、航る:太田光

これが一番微妙。まあ薄々感じていたことではありますが、太田光って意外と真面目なんだなーと。
北のミサイルがどうのこうのとか沖縄の基地がどうとか、台詞の中でコメディアン太田が流れにぶち込まれてくるのですが、会話の流れに沿ってはいますがぶっちゃけ恥ずかしい。うーん、なんて言えばいいのだろうか。一部の層には伝わると思うのですが、「なんだよ、しらねーのかよ。ジョジョだよry」に通じる寒さ・恥ずかしさみたいなものがある。
 冒頭のシリアスな少年の叫びシーンが最後にギャグ的な描写の中に落とし込まれる、観客の足を引っ掛けるような構成とかも「だからなに」という程度のものでしかなく、逆に困惑するばかりであります。

 でも元ヤクザな草薙くんはやっぱり結構ハマってる気がする。任侠ヘルパーで知ってはいたので別に新鮮なわけではありませんが、照明とかメイクの力もかなりあるとはいえあれだけの顔面アップに耐えられるというのはやっぱりすごいと思いますですよ。尾野真千子のヘボ演技が観れるという意味では逆に希少ですし。尾野真千子で思い出したんですが、「ペンタゴン・ペーパーズ」を観に行ったときに河瀬直美の新作の予告編が流れてめっちゃテンション上がりました。また永瀬正敏出てるし。

それはともかくとして、まあなんというか、このエピソードに関しては本当にこれくらいしか書く事がない。タイトルの「光へ、航る」のトンチみたいなオチとかから察するに、星新一賞の選考しているうちにそっちに引っ張られてしまったんでねーの、と邪推してしまったり。

あと北野武好きすぎるでしょ、この人。わざわざ沖縄の海で締めるのとか、明らかに「ソナチネ」の影響でしょ。話としては、わざわざ沖縄にする必要ないし。
 

「新しい詩:児玉裕一

これはどこまでが児玉監督の采配なのかわかりませんが、エピソード1~3それぞれのオチとかその後の出来事が描かれて集約されているわけです。いい感じにお祭り感が出ていると思います。たとえば、ep3のラストで仕返しを受けたロリコン誘拐犯がこのep4ではちゃっかりグラスを磨いているシーン。最初は「生きとったんかワレェ」と半笑いではあったのですが、「再起」という新しい地図のテーマにはピッタリですし、よく考えるとこの辺のすくい上げは素直に製作陣の優しさとして受け取っていいのだと思います。

ここでも慎吾ちゃんが結構おいしいところを持って行っているんですよね。「クソ野郎~」の中で一番おいしいのは慎吾ちゃんだと思う。

サイプレス上野が楽曲提供してたり、劇中の歌はかなりいいのばかりなのでサントラはちょとほしいかも。

 

とりあえずはこんなところだろうか。