dadalizerの映画雑文

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シュレック2の女王様と王様

の名前の元となった人物のドキュメンタリー映画「ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー」を観てきた。

 ヒッチコックキューブリック、コッポラやスピルバーグらに愛された絵コンテ作家とその妻であり映画リサーチャーのリリアンがふたりで創った名シーンの数々!という予告編に惹かれて見に行ってしまいました。絵コンテが映画においてどのような役割を果たしているのか、そしてその絵コンテ作家の中でもハリウッドに愛されたハロルドの仕事ぶりとは・・・っていう話かと思っていたのですよ。スタッフロールに乗ることもない裏方の真実みたいなものって、その人だけでなくその人の仕事がどういう働きをするのかということが重要になってくると思うのですよ。しかし本作は「絵コンテ」という単語の説明が広辞苑から引いたような感じで説明されるだけで、絵コンテが実際に映画製作において具体的にどの段階でどう機能するのかってことが描かれた上で、ハロルドの才覚に技術的に切り込んでいったりするのかなと。パヤオ氏なんかは自分で脚本の代わりに絵コンテを切ってそれを元にストーリーを作っていく作家ですから、必ずしも絵コンテ作家というのが必要なわけではないわけで、やっぱり気になりますよね。アニメだと絵コンテはクレジットされることが多い気がしますが、実写映画となると途端にクレジットされることって少ないような気もしますし。ですが、本作はそういった技術的なことよりもこの二人のハリウッドで過ごした半生――というよりもはや人生そのものに迫った作品なのですね。ハロルドの仕事の中で絵コンテの役割なんかにも、触れられることは触れられるのですが、それも結局はハロルドという人物の中に消化されてしまうわけで、絵コンテ作家や絵コンテという仕事そのものには焦点は当たりません。

また、予告やチラシでは多くの映画作家に愛されたという宣伝文句がありましたがヒッチコックとの絡みがほとんどでキューブリックに至ってはほとんど触れられませんでしたし、コッポラにインタビューするならルーカスやスピルバーグのコメントも欲しかったですね。まあ後ろ二人は忙しいから仕方ないですし、コッポラやメル・ブルックスのコメントがあるだけでも良かったのかなぁ。商業作品として94分にまとめるためにかなり削ったんだろうなーというのが、存命のリリアンのインタビューのカットなどからも伺えたので仕方ないとは思うんですけどね。細かい部分を補うという意味では、パンフレットはオススメです。全部ではないですが二人が関わった作品の一覧と監督の名前(および作品の中でどういう仕事をしたか)というのが掲載されています。あと表紙が可愛いので。劇中でのアニメも手描けたパトリック・メート(メイトとの表記揺れがパンフ内にあったので両方表記しときますが)がパンフの表紙になった絵を描いたのかな? ともかく可愛いです。劇中だとカラーではなく白黒だったので、彩色されているパンフの表紙はよござんすよ。

ストーリーというか、本作の話の流れはパンフにそのまま乗っているで、時間がないという人はパンフを買うだけでもわかりやすいかも。

残念ながらハロルドは2007年に無くなっていて、その前年に撮影されていた彼の映像だけでしか動く映像としては存在しないのということもあり、私個人としてはリサーチャーであるリリアンの方に深く共感してしまいました。共感というより関心を持ったというか。まずこのリリアンさん、とてもキュートなのです。若い時代の写真も劇中で使われていてそれも可愛いんですが、米寿を過ぎた今もすごい可愛いらしい声でインタビューに答える姿とか笑顔がいいんですよこの人。あとリサーチャーというのがちゃんと仕事としてあるっていうことを今回初めて知ったんですが、資料に囲まれて映画に必要な情報をかき集める、こういう職業すごい憧れますね。あ、ちなみにリサーチャーというのは映画を作る上で必要な情報を調査・収集する専門家のことで、物語の構想を練る力の源泉になったり事実を裏付けることで物語にリアリティを与える仕事だそうです。

一口に資料といってもライブラリーにあるだけではなく、スカーフェイスを作るにあたって実際に引退した麻薬取引をしていたギャングのボスに会ったり、ありえない量の名刺から人脈を伝ってほとんど業界とも関係ない赤の他人から情報を受け取ったりと、インタビューの印象から受ける通りのアクティブさです。

ハロルドのエピソードも、絵コンテ作家として初めて依頼を受けたのが実は他人の作品を気に入ったコロンビアが間違えて彼に連絡をしてきて、それを彼が嘘をついて自分のだと言って仕事をもらったことがきっかけだったりとか、才人のくせにセコセコしているところとかもチャーミングでついつい笑ってしまいました。ほかにもリリアンが娼婦に間違われたエピソードやスタートレックを本当はやりたくなかったハロルドをリリアンが説き伏せた話などなど、見所はたくさんありましたし、ドキュメンタリー作家であるダニエル・レイム監督の編集の手腕もあってしっかりとまとまっています。

個人的にはエクソシストの現場で鬼畜フリードキンとどうやってハロルドが折り合いをつけたのかとか知りたかったり、物足りなさがないわけではないですが「名作の影には縁の下の力持ちがいた」的なものが好きな自分には楽しめましたし、ワンカットワンカットへの考え方を揺さぶられたような気がします。そういう意味で、見て損のない映画でしょう。

せっかくなので劇場のパネルとかの画像をば。

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