「まるでカーチェイス版『ラ・ラ・ランド』だ!」というアメリカの批評家の言葉をそのまま宣伝に使っていたこの「ベイビー・ドライバー」なんですが、マジでそのとおりだった。
というのも、音楽的な要素というもっとも注意を引く部分以外に、劇中のできごとが結局のところ二人の世界に収斂していく感じとかまさにそんな感じ。で、自分はそこがあまり受け付けなかったりする。
とはいえ、ララランドの二人ほど自己チューではないというか、仕方なしというか物語的な因果があるからあっちほどではないのが救いではあるのかもしれんです。それと話の推進力というかテンションのもっていきかたも似てる気がする。ララランドは冒頭ですべてを持って行ってサントラの二曲目のアレ(someone in the crowdだっけ)のミュージカルシーンで最後まで牽引してくれたようなものでしょう? それでいくとこの「ベイビー~」も確かに冒頭の銀行強盗からのカーチェイスシークエンス(地味にベイビーのトラウマ要素がここでさりげなく示されていたりする)からの、作戦後のコーヒー購入シーンをワンカットで見せるあたりまではこちらも「うおおおおお!」となります。で、ケビン・スペイシー(ちょっと太ったな)が出てきたりして裏の仕事の作戦を垣間見られたりしつつジェイミー・フォックスのサミュエル・ジャクソン感とかクライムクライムしていてアガりますですよ。
劇中では本当に絶え間なく音楽が流れ続けていて、それはもちろんベイビーの心情・耳と一致しているわけでですが、ここまで間断ないというのもあまりないのではないでしょうか。場面と音楽(が消失したり弱まったりする部分も含めて)の一致はすごい上手くて感心させられたんですが、それゆえにというべきか、ララランドほどのパンチを受けなかったんですよねー。というか「another day of sun」と「someone in the crowd」がララランドの価値の大半だと思っているので、ぶっちゃけ「ベイビー~」はこの二曲のようなどでかい一発がなかったことが「面白かったけどロッテントマトの評価ほどじゃないなー」というところで落ち着いてしまった気がする。
まあこれは完全に音楽の趣向の問題ですし、ベイビーが走って逃げるところの音楽とかは個人的に好きなんですけど、どうも音楽を適切に使っていても使いっぱなしであるがゆえに平板化してしまっているような気ががが。
ただーし、ララランドの方がそうであるように、こちらも二人のために世界が変容――とまではいかないまでも、ちょっと世界が優しくなっていくのがうーむという感じ。物語が二人の逃避行に収斂していくのがあまり好きじゃない()。だけどね、ベイビーはかわいそうな子であって、ララランドの二人ほどの独善性はないというか、むしろいいやつですし応援したくなるタイプではあるし好きなタイプではあるはずなんですが、なんかそこまでベイビーを暖かく見てやれないのはなぜだろうか。
天才肌だからかしら? そういうわけでもないと思うんですけど、うーむ自分がわからなくなってきた。伊藤のことでわかったと思った気がするんですが、この辺はもうちょっと掘削する必要がありけり。
つーかよく考えたらみんなほどエドガーライトが好きってわけじゃなかったなーということを今回の「ベイビー・ドライバー」で気がついた。「ショーン・オブ・ザ・デッド」とか「ワールズエンド」とかもそこまでじゃなかったんだすよ。いや、ベイビーもこの二つも好きな方ではあるんですけど。ワールズエンドなんておっさんメインですからね。
ただ、そこまで熱量はなかったという。
それでもやっぱりカーアクションは見せてくれます(ちょっとカットのアングルとかでわかりづらくなっちゃうときもありましたが)し、音楽のおかげで前編にわたってテンポよくハイテンションで最後まで引っ張ってくれるので腹八分目の満足といったところ。
個人的にはスペイシー萌え。肥満気味だけど強権で警察まで飼いならしてるスペイシー萌え。嫌だダメだと言いつつ結局は命懸けでベイビーを助けるツンデレなスペイシーに萌え。
あとダーテンがいました。こいつ本当にいろんな映画に出てるなおい。
あとあと、ベイビー役のアンセル・エルゴートくんがどうしてもガリットチュウの福島に見えてしまうのですがわたしの目がアレなのかしら。