dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

オンライン試写会

「ドント・ルック・アップ」観ました。

どこの国も自分の国の惨憺たる(政治)状況に頭を悩ませているのだなぁ、と「心中お察しします」と申し上げたくなってくる。

コメディであるのでこの映画にとって重要な価値基準として笑えるか笑えないかというのがあるわけで、その点でいえば自分は何か所も笑えたところがあったので十分元は取ったと言える。そもそも試写なんで金払ってないですが。

まあアメリカの政治風刺コメディらしいっちゃらしいというか、今シーズンの「サウスパーク」がコロナパンデミックのことを(舞台設定は近未来ですが)直接的に描いているのに比べれば、こちらは稀代の超大作アホ映画「アルマゲドン」をベースしており、「直截的な人類の危機」要素は隕石衝突という一昔前の(と言ってもその可能性自体は常にはらんでいるわけですが)展開をなぞっている。まあなんで「アルマゲドン」なのか、といえばあの映画がバカ映画であるのでバカを風刺するためにメタレベルで位相を合わせたというか、まあそんな感じなのかもしれない。

ぶっちゃけどこまでが実際にあった出来事をベースにしているのかというか、事実ベースの「あるある」ネタなのかは判然としてないのですが、それでも異邦人たる自分が漠然と抱くアメリカの低知能な部分の直喩は理解できてなおかつ笑えるので問題ないのだろう。笑ってられないんですけどね。

クリエヴァのカメオだったり、アリアナの使い方だったり、まあその辺は言わずもがななんですが、ただ今回はそれこそ「サウスパークアイロニーやバカバカしさが加速しているきらいがあって、その辺は割とバランスを欠いている気がしなくもない。
よりフィクショナルな要素を加えたことで、バカバカしくもうすら寒い現実のメタファー(ですらないんだけど)との食い合わせがやや悪く見える。まあ、ここまでしないと現実の状況に食い破られてしまうというある種の危機意識みたいなものもあったのかもしれない。それはトランプが大統領に当選した際にトレイ・パーカーが言っていたようなことと同じというか。
シネモアの記事を引用すると「マッケイはコロナ禍の以前から脚本の執筆を始めていたが、パンデミックの影響で書き直しを強いられたことを明かしている。「彗星の否定は(映画より)現実のほうが10倍ひどいことがコロナ禍でわかった。彗星で減税が起こると書いたら、本当にトランプがコロナで減税をやった」とは監督の談。まったく意図しない形で現実が脚本に追いついてしまったために、よりコメディらしく、バカバカしく書き直す必要が生じたという。」ことらしいし。

あとは「アート」にまつわる風刺。特にコンサートやらの歌とチャリティなど、勇気づけるためのナンタラカンタラ。そこに潜む欺瞞なんかも描かれていて溜飲が下がった。ことさら強調してるわけではなく、現実をそのまま写し取るだけであそこまで醜怪に描けるというのも、特にアメリカと日本は9.11や3・11を経験しているからというのもあるのやもしれん。行為そのものというよりも、その行為が特定の文脈に絡めとられたときに生ずるどうしようもない臭さが。


劇中の映画「万物破壊」のビジュアルポスターがアルマゲドンシリーズ(実際は日本の配給が勝手にシリーズ化したB級映画なんだけど)みたいで笑えたり、メリル・ストリープ大統領の夫と思われる人物がクリントンに激似だったり(ていうかサウスパークみたいな切り抜きかしら)、どうでもいい最後の伏線回収とか、随所で笑えるネタ・突っ込み切れない小ネタであふれています。

まあ、実はこの映画それ自体がこの滑稽な状況のサイクルの内部に留まっているのではないか、というのはネットフリックスという媒体を通じていることを考えると何とも言えないのだけれど。