「グリーンブック」
彼我越境の物語としては面白いし、ある種のロード―ムービー的に、まあ題材が題材だけにその背後に潜む(潜んでない)問題は根深いのだけれども、しかし割とオーソドックスなウェルメイド(?)なつくりになっているような気がする。
良い映画、というよりは良い感じの映画というか。物足りなさは確実にあるし、被差別者と異なる被差別者の友情物語を、搾取的に観ていないかという自己疑念による後ろめたさがないと言ったらうそになるのだけれど。
トニーが割とマチヅモ的というか、まあ時代的にあれでも全然一般的良心家庭だとは思うのですけれど、内在している問題をうやむやにしていることからくる全面的にライドできなかった理由なのではないかな、と個人的には思う。
最後の方のトニーとドクの家の対比(撮り方含め)も、意図するところはわかるんだけれど、うーん。
でもまあそれはそれとしてマハーシャラ・アリ最高。彼の表情だけでこの映画は確実に勝利している。彼の細かい所作に私は涙してしまった。スーツ試着のところでの「なるほど」の一言と表情に込められた(CV諏訪部も良かった)怒りと悲哀。特に表情に湛えたものは、あそこ観ただけで泣いてしまいましたよ。あとトニーに詫びるとこの手の動きの、自然なんだけどあざとい感じ萌え。撮り方もあざとくなくて、ああいうの好き。
「ワタシが私を見つけるまで」
こういう超絶くだらない映画というのがむこうにもあるのだな、というのが知れてむしろ安心したというか。
「MIFUNE:THE LAST SAMURAI」
なんか思ったより数段薄いドキュメンタリーだった。スピルバーグとスコセッシが出るというので少し期待していたのですが、なんかだいぶ薄味ですさまじい物足りなさ。
「ANEMONE:エウレカセブンシ ハイエボリューション」
これのあとにアレ、というのがいたたまれない。
まあ遠足は準備しているときが一番楽しいというアレみたいなものだろう。
「夢のあとに」
血縁、非血縁からの逸脱。
あ~ロブ・ライナーかぁ。なるほどぉ。といった感じ。
モーガン・フリーマンとニコルソンという組み合わせだとバイオレンスのにおいがしてしょうがないのだけれど、特にそんなことはなかったず。
これを感傷的に観るにはまだ若すぎるような気もする。
これ、やりようによっては異種間の寿命の差異から生じる悲劇だったり、というような、ある種のフリーク映画として描出しうるのではないかと思ったのだけれど、まあその異種が犬という時点で(押井守的視点からするとまた別口なのだろうが)どう考えても最大公約数を狙ったわけで、そんな制作側の意図に対して私の妄想というのは明らかに真逆なわけで。
とはいえ、犬はほかの動物に比べて人間に近い(オキシトシンの分泌量がダンチ)ということもあり、まあ警察犬のくだりでは当然のごとく涙腺が緩んだりしたのだが。
ダイアローグが一人称ではなく三人称的だったら、もっと良かったかなと。