dadalizerの映画雑文

観た映画の感想を書くためのツール。あくまで自分の情動をアウトプットするためのものであるため、読み手への配慮はなし。

モザイクデカ過ぎ

アベマで「ふがいない僕は空を見た」を観たんですけど、モザイクでかすぎ。

それはどうでもいいです。普通にいい映画でした。ダンサーインザダークをソフトに包んで地に足つけることを意識したような作りになっている。

窪田正孝が相変わらずいい演技なのと、声がまだ高いおかげで高校生役も違和感ない。ていうかケータイ刑事の流れから見てないと短髪に違和感あるかもしれんですね。

あと瑛太の弟本当に瑛太に顔似てるなぁ。

 

ま、話はすごくわかりやすい。生と性の話だし。ただスマホで見てると役者の表情とか(特に目ね)わかりづらかったりするのがねぇ。窪田正孝の最下層貧困なのに傲慢(プライド)のせいで飢え憤怒嫉妬で永山絢斗のハメ撮りをばら撒いたりと、キャラ造形がクリシェに陥っていないのもさる事ながら窪田正孝の目のおかげもあるんだなぁ。ハメ撮りバラまくとこはすごい観ていて微笑ましかった。ちょっと「ダンサー~」のビョークのミュージカルシーンとも重なる現実へのレジストがとてもよい。

田畑智子はなんていうかもう、絶対に幸せになれなそうでギリギリのところでなれそうでやっぱり最後はバッドエンドに行きそうな存在感とか絶妙だし。JTの人の絶妙なキモイ演技のおかげでどこか屈折した夫婦生活(姑が来ると平然と姑の横に座る夫とかの演出も光っていましたね)であることがわかる。よだれと涙ですぎで笑ってしまったんですがね。ウィキには愛情を持っているとありましたけど、あるか?どう考えても嗜虐嗜好と性欲発散のための実に都合の良い存在としてしか見ていな異様な気がするが。まあ愛情というよりは、固執だろうか。

あとみっちゃん。みっちゃん最高。こういうじとじとした話の中でああいうサバサバした人がすっぱりさっぱりした振る舞いをしてくれると気持ちいいですよね。

ショタコンボンボン犯罪者の三浦くんもどっかで見た顔だなーと思ったらあの進撃の巨人でジャンの役をやっていたんですね(笑)。進撃では臭みのある演技だなーと思った(声質もあるんだろうけど)のですが、こちらでは普通に演技ができていたのでやはりあれは演技指導の問題なのだな。

あの人の「俺はどうしようもなくダメなやつだから、どうしようもなくいいことしないと釣り合わない」みたいな台詞があるんですけど、この考え方はすっごく自分が世界と向き合うときのスタンスに似ていてかなり共感できた。そりゃ小さい子供に手を出したらいかんですが、それが悪であることは彼にもわかっていて、それがどうしようもないからこそどこかで贖罪をしようとしているわけで、実に人間的ではないか。

 

全体的にいい映画だったけどあくつと松永に関してはもうちょっとどうにかならなかったのだろうか。特に松永に関してはなまじ尺を取ったがために最後にアップで映してしまうのは逆に消化不良感が増してしまっているような気がするが。あれはもっと引きで撮ってクラスメイトとか全体の中ですこし目立たせる程度のほうがより普遍性を帯びるような気もしますが。

 

ただまあ最後の最後で「やっかいなもんつけて生まれてきたな」という台詞で色々と許した。そういえばマウスの話ですが精子いらずで子供が作れるという話があったっけ。そうなると本当に不要になりますね、チンコ。逆に精子だけでも子供が作れるらしいのですが。

ssffの続き

映画観に行ったら嫌なもん観たよ、うん。才能の差というやつだ。あと審査員の審美眼(というかパワーゲームへ言及するべきなのかしら)。

京都明日で短編映画のプログラムは制覇なんですけど、差が激しすぎて困惑ですよこれもー。

とりあえず見た順、あと普段はランキングとか付けないんだけどランク付け=嫌がらせのようなものをしたくなる程度には去年との落差が激しいので。去年はどのプログラムにも最低でも一つは秀作があったんですが、今回はプログラムによってはハズレしかないものもあるんで。

その分、今日のプログラムで河瀬直美監督のスゴさを改めて認識できたというのはあるけれども。

 適当に一言感想付けていく感じで。

 

プログラムA 2017年受賞プログラム1

 「東京音℃」:CMかPVみたい。実際、3分半ですから監督もそのつもりなのでしょう。特になし。

 

「ハロー、アゲイン」:ナオミ・スコットがかわいい。

 

「偉大なる遺産」:韓国映画。日本で封切られている韓国映画はどれもハイレベルなのですが、短編はどうかというと・・・まあ、心拍のところは面白かったし会場でも笑いが起きていましたが、なんか大学在学中の授業でわたすが書いた超短編の小説みたいなオチのどうでもよさ。

 

「サイレン」:まあまあ。ぶっちゃけかなり早い段階でネタは分かってしまいましたし、包丁のくだりとか無理矢理感は否めませんがまあそんなものでしょう。といったところ(何様だ)

 

「巨人のならわし」:今回のプログラムのアタリ。というか、CGとは思えない手書き感で、その映像の質感にずっと思考を奪われていたので話が頭に入ってこないくらいでした。つっても木々はむしろCG感が強くて完全にリソースの注ぎ方を割り切っているからなんでしょうが。

いやージャパニメーションのCGってなんか使い方が画一的でもっといろんなアプローチすりゃいいのにと思っていたところにこれだったんで、今後の発展に期待できそうな感じ。

 

「born、bone、墓音」:ガレッジセールのゴリが監督した作品。にじいろジーンでしか見ないなぁと思ったら、こんなとこで活動もしていた。

今回の中では相対的に評価が上がっている。いやまあ、台詞とか子役(具志堅の孫娘とも割る)の叫びとか色々と言いたいところはあるんですが、芸人監督・芸人主演でちゃんと笑いどころがあって、しかも結構な頻度で笑えるというのは中々いいのではないでしょうか。会場でも一番ウけていましたし。そりゃドラマ的・コント的な笑いだったのはたしかなんですが、もともと宮迫とかとコントやってたしねぇ。わたすも普通に笑いました。あと沖縄(のさらに局所)文化の風習である「洗骨」というもののアピールも兼ねているという点でも興味深いものでした。最後の取ってつけたような台詞は排してもよかったとは思うけどねぇ。

 

プログラムE U-40注目の日本人監督

 

「ジュリエット✖2~恋音ミュージカル~」:アイドル?かなんかのPRかなにか。芋洗坂係長とか響のデブのほうとかが出ていた。いや、短編映画としてどうかと言われると「ダメです」としか言いようがないんだけど(u-40なのにどうしてあんなに古臭いクリシェの男子高校生ができあがるのかとか、あまりにカットの脈絡のなさとか・・・前者は意図的な気もしますが)、アイドルの眺めのPVだとしたらそれなりにいいのかもしれない。いやダメか、ストーリーあってないようなもんだし。そのへんはアイドル文化に疎いのでよくわからない。でも曲は結構いい感じかもーと思ったらAAAだった。

 

「ワレモノ注意」:ガチPV。わーなんか女子高生が好きそー。GREENのPVでありそーという印象。。

 

「胸にTATOOなんか入れて」:肩書きはあくまで肩書きであって、実力とはなんの関係もないぞ(監督のウィキを見ながら)。ぶつ切りカットとか、そもそも話がどうでもい感じとかPV感というかCM感がしゅごい。15分かけて迷惑かけた放蕩娘が都合よく許されるという話。「なんだその胸のタトゥーは」っておじさん、あんたそんなこと言いながら胸見てたろ!ていうか見てたからそう言ったんだよな!

 まあすごくどうでもいい作品ではあるんですが、個人的に二箇所好きな部分がある。一つは「死人巻き込むなよ」という台詞と、おじさん目線で胸のタトゥーを映すところ。あそこは結構エロくていいと思う。巨乳じゃなくて成長期の膨らみかけっていうのがまた。

 

「ゆーことぴあ」:ピンサロが「BLOW JOB BAR」と訳されていたのがなぜかツボにはいってしまった。これが一番体裁を保っていたようなきもするが、だからどうというのだろうか。

 

このプログラムについて言いたいのは、もっと才能あるU-40いただろ。入江悠とか40じゃなかったっけ。もうちょっとなんかねぇ、層の薄さを感じてしまうのですが。いや、本当はもっとすごい監督がいるんでしょうけど。

 

プログラムC 2017年受賞プログラム3

「想い出の保管場所」:トム・ヒューズっていう俳優が出ているのですが、この人を知らなかったので特に興奮したりはせず。ただ演技はなかなかよかったと思いますよ。あれはたぶんアスペルガー発達障害なんでしょう。それを特に説明的なセリフなしで見せる手際とかは評価していいのではなかろうか。刺激に敏感だから、ということを理解していないと色々とわかりにくいですが。

そういえば、別のプログラムでもナオミ・スコットが出てたりダン・スティーブンスが出ていたりとメジャー俳優枠みたいなのがあるっぽいのですが、去年がジュード・ロウアラン・リックマンマーティン・フリーマンとビッグネームばかりだったのに比べるとどうも各落ち感が否めない。いや、キャリアが違うので何とも言えないのですが。

 

「華やぎの時間」:低予算であることがまるわかりの作りではあるんですが、結構笑えた。ロウソクのくだりとか。あと先輩役の人が本当に不快な感じがうまい。なんか芸人にいなかったかな、こういう感じの人。

 

ヒッチハイク」:韓国映画。ビッグシティの和解エンド。でもない。

 

「パカリアン」:人形アニメーション。要するにストップモーションなのでしょうが、背景は完全に合成だったりと予算のなさを見せ付けてくれる。やはり斎藤工をキャスティングしたことが予算逼迫の原因か。

前から思ってたんですが、斎藤工って実はそこまで演技達者というわけではないような気が。今回の声優もなんかずっと平だったし、そもそも重宝されているという感じもしないし。いや、わたしが彼の活躍している映画をみていないだけなのかもしれませんが。

これは邪推なんですが、彼自身はその俳優としての才能の限界を感じているからこそシネフィルとしての知識を活かして監督業に乗り出しているんじゃないかなぁ。と思った作品。アニメーションの質が高いというわけでもお話が面白いというわけでもなく、去年の「眠れない夜の月」とは月と鼈。よくわからないけどストップモーション枠みたいなのがあるのだろうか。

 

「窓から見える世界」:最初はパイキーかとも思ったのですが、そういう設定というわけでもないのかな。「mr.rady」は「おねえさん」ではなく「オネエさん」と訳して欲しかった。オネエさんの最後の方のカットがよかった.

 

 

プログラムD 2017年受賞プログラム4

「Home Away From Home」:もっとシームレスにしたら今敏っぽいかもしれない。日本人の言葉が風鈴であることの意図はわかるのですが、他はよくわからない。でもまあ割と好きな作品。

 

「Falling Up」:特になし。いやまじで。

 

水戸黄門Z」:水戸黄門役のひげが気になった。ミュージカル仕立てというのはなんとなく新鮮だが、別にクオリティが高いというわけでもないので特になし。いばらきはほかに作品がなかったのだろうか。

 

「水を、ください」:まあ、真新しい時計の一瞬のカットとかさ、意図はわかるけどあの世界観に合ってない気がします。暴力シーンのカットはアングルのせいでよくわからないことになっていたなーとか。どういう病なのか知りませんが病気の娘のガタイが良すぎて笑いました。ラストは大爆笑。

 

「アナ」:イスラエルの映画。一番映画していました。ベストアクトレスも納得のやぼったすぎる中年女性に笑う。あんなラインが出る服着たらそりゃそうなるわ、という。何が映画的かというと、間の取り方なんじゃないかしら。うん、でもまあ一番映画でした。

 

プログラムE 世界も認める日本人監督

はい。文字通りほかのとはレベルが違います。そりゃ一線で活躍する監督なんだから当然といえば当然なんですが、正直このプログラムだけでほかのプログラムを蹴散らせる満足度。

 

「キックハート」:湯浅政明監督作品。相変わらずアニメーションであり、アニメーションである。台詞なしにキャラクターの心情を伝えきるアニメーションとかまさにといった感じ。

 

「嘘ーLiesー」:はい、来ました本命の大物。河瀬直美監督でございます。「あん」を見てからこの監督の名前はよく覚えていたのですが、全プログラムの中でダントツだったんじゃないでしょうか、これ。ただのインタビュー場面(少なくとも表面上は)をあそこまで魅せるとは演出の手腕がちょっとおかしい。まず別所哲也。この人が演じる男の胡散臭さの演技がすごい絶妙で、ある事実が明確に提示される前から「なんか怪しいなぁ」というのをにおわせてくるのが絶妙。まあタイトルによる先入観もあるのでしょうが、むしろそれを狙ってこのタイトルにしているのだったら尚更周到ということなのですが。

で、通訳の女性との不倫という情報が明確に提示される前から特定のワードによって通訳の女性(この人の演技も最高)が声を曇らせるのですが(あれ音も編集してんのかな)、そこに至るまでの演出がもうおかしい。たぶん、一つには二つの言語が違和感なく同居していることもあると思う。それに加えて英語も普通に聞き取れる英語であるため、否が応でも集中力を要されるというところもあるだろうと。

ちょーっとレベル違いすぎて驚いた。いや、「あん」の時点で相当な演出力があると思ってはいたのですが、短編でさえこんなもの見せてくるとは思わなんだ・・・。

 

「水準原点」:抽象アニメはいまいちよくわからんのですが、この試みそのものは初めてなので最後まで食い入るように見てました。最後に全文載せてしまうのはアニメーションの敗北ではないかと思いますが。というか、これ日本語に慣れてないと結構難しいと思うんですが(日本語に慣れていても最後のあれがないと読み取れないと思いますが)、賞を取ったということは何かほかに芸術的な側面で突出したものがあったということでしょう。でもクレイアニメの激流表現というのはなかなか面白い。

 

「ゴムテッポウ」:伊丹十三の短編。伊丹十三に関しては「家族ゲーム」に出ていたことを後で知った程度なのと、一定の評価を得ているということくらいしか知らなかったので、見る前の評価などはほとんど知らず。で、どうだったかというと、なんかよくわからないけど見ている間すごいフラストレーションが溜まった。なぜかわからない。あれか、インターバル挟んでいるとはいえ六時間ぶっ通しで映画見てたからだろうか。

うーん、なんでだろう。

 

 

 とまあこんなところでしょうか。

 

審美眼を疑え

えーわたくしが絶賛した「幼子われらに生まれ」がモントリオールで賞を取ってしまったんだと。マジかよー。自分の映画を見る目がないみたいじゃないですかこれじゃー。実際ないのかもしれないけど。

モントリオールっていうのはまあ、映画祭の中でも下の下というか別にとったから何というような映画祭でして、まあぶっちゃけモンド・セレクションみたいな感じというか日本人は受賞しやすかったりするんですわ。まあhana-biベネチアで賞を獲ったりもしているし、「そこのみにて光輝く」もモントリオールで受賞してたりするから一概にどうというわけではないんですが。

一番の不安要素は柳下毅一郎三島有紀子の前作をディスってたんだよなー(笑)。まああの人は押井も結構ディスったりしてたりはするのですが、「少女」ディスはあきらかにやる気がない感じなのがまた自分の審美眼を疑いたくなるんだよねぇ・・・。逆に「少女」がどんなもんなのか観てみたくなったりするのが柳下毅一郎の文章の妙ではあるんだけども。

 

いやだけどいい映画だと思うんだけどなー「幼な子」。白石和彌監督とか青山真治監督とかもコメント寄せてたし。

なんて考えていること自体が、自分の厭悪する権威主義的な思想じゃねーかと思ったりした今日この頃であった。

今日でssffのプログラム消化し切る(予定)し、そちらの感想もあげねば。

イーストウッドをネブラスカで拭う

 相変わらずのイーストウッドな「スペース・カウボーイ」であり泣けそうで泣けないラインをせめて来ていたのですが、正直なところ吹き替え効果でちょっとグッときてしまった。いや、青野さんとか野沢のほうのナッチとか好きなんですよ。あとトミーリージョーンズの菅生さんね。ディスク版の吹き替えじゃなくて日テレ版だったんですよね。

 いや、なんか、本当にいつもの、というか今まで自分が見てきたイーストウッドなのでこれ以上何をどう言い表せばいいのかわからんのですよね。

明瞭簡潔で適切な描写してはいるものの、なんかこう一線引いてる感じとか、アルマゲドンだったらこんなにさらっとやんないだろーという自分でもよくわからない比較の仕方をしたくなるようなそっけない演出とか。

どうしてここまで教科書的でありながら異質な感じを受けるのだろうか。これが作家性というやつなのだろうか。

 

あと「ネブラスカ 二つの心をつなぐ旅」が面白すぎた。

ともかく笑える。小津安二郎にはない笑いの要素があって、もしかしたら「トロピックサンダー」を劇場で見たときと同じくらい笑ったかもしれない。従兄弟とかお母さんの下品さとか入れ歯のくだりとかともかく笑ってしまった。

そのくせほろりとするような温かみもあって、「スペース・カウボーイ」での残尿感をこちらで解消できた気がします(笑)。

あと全然気付かなかったんですがブルースダーンがとっちゃまを演じていたのですね。「サイレント・ランニング」とか「ファミリープロット」のあの人だったんですねぇ。

 

カーペンター映画とワイルドなアパッチ族

カーペンターである。

映画が好きな人なら普通に知っているだろうが、一般層にまではそこまで普及していないだろうという絶妙にわかりづらい知名度の映画監督であります。

無論、わたくしも「ゼイリブ」「遊星からの物体X」「ニューヨーク1997(エスケープのほうはみていない)」など有名どころは多少は抑えていますが、改めて見るとこの人の作品はまあ面白いこと。音楽も自分で手がけているだけあって外していることはないし。音楽といえば結構印象的な音楽が使われていたなー。

というのが「ジョン・カーペンター要塞警察」を見て思った次第です。

少し調べたところによるとリオ・ブラボーファンのカーペンターがオマージュ的に作ったという作品らしいのですが(西部劇が好きなことは知っていましたが、こちらは未見)、なんだか結構ホラー要素が強いぞこれ。そしてまた、どことなく黒沢清っぽいというかなんというか、音楽の効果も相まってすごく淡々としているのが不条理こそ条理というような前半部とか半端ないです。

個人的には篭城戦より前半部のすごく無機質な恐怖感がイイ。移動アイスクリームのミラー越しの車の行き来とか、ヌッと青年が現れるところとか。ストリートギャングのシーンはほとんどあますことなく怖いんですが、ストリートギャング四人のあの血の誓いシーンの血の通わなさときたら、逆に笑えてくるほど。ほとんどターミネーターとしか思えないですよねぇ、彼ら。

で、女の子が射殺されると。あれもかなりショッキングでしょう。もうホントこちらの常識というか道理を安安と踏み越えてくる無感動な殺人シーンは冷血としか言いようがありませんぞ。

女の子の父親に復讐されて仲間が死んでもうろたえるでもなくただ無言で追跡してくるところとか、いやもう本当に勘弁して欲しい。怖い。

警察パートとカットバックで描かれるんですけど、こっちがなきゃホントにただのホラー映画ですよもお。

で、そこから護送途中の囚人をチームに加えてストリートギャングの集団との篭城戦に発展していくわけですが、これも予算の都合なのか知りませんが淡々と死んでいくのがねー、もうこっちまで真顔で見るしかないんですよね。射撃する側の視点が介在することなく、ただひたすら撃たれて死んでいく側だけが映されるので(しかも派手な銃声はなくサイレンサーのプスッという音で)、こうなんていうか命のあっけなさみたいなものが浮き上がってくるのがすごく残虐。ほとんど暴力的と言ってもいい。

生き残る連中が揃いも揃って理性的かつクールでかっこいいのですが、カーペンター的にはそれこそが生存の力なのかもしれない。そういう意味で、惜しくも途中退場となったウェルズは多分に感情的すぎたのでしょう。いや、ウェルズも十分対応していたとは思いますが。

そのくせちゃっかり頭脳戦を論理的に描いてみせたりするクールさ、90分というタイトな作り。あと強い女性像。これは自分の中における女性像とすごくかぶるので親近感が湧いたりしました。

 

うん、これは傑作と呼んでもいいんじゃないかなぁ。

 

で、「ワイルドアパッチ」

こちらも予想外の傑作。

白人若年少尉とおっさん有能アドバイザーと有能アパッチの男(ケ・ネ・ティ)がの三者がともかくいい。いや、少尉は正直なところ最後までいいとこなしどころかミスってばかりで観ているこっちとしては腹立たしいことこの上ないんですけどね。

ただ、そのダメダメな少尉をサポートするおっさんアドバイザーことマッキントッシュが渋く銃の腕前が優れていて、少尉をサポートするのが観ていて微笑ましい。まあバート・ランカスターだしなぁ。

まあでもmvpはケ・ネ・ティでしょうね。同族を殺すというのに冷徹にただ仕事を実行していく。マッキントッシュとの言葉数少ないコミュニケーションとかもちょっとぶロマンス要素があっていい。あと長瀬くんに似てる。

しかも結構考えられた頭脳戦が観れるという。要塞警察といい今日の収穫は結構大きい。

 

 

昨日からの備忘録

 

えー昨日の夜にssffっていう東京国際映画祭と連携した短編映画の映画祭の初日がありまして、それを観に行ってきましたので簡単に感想と録画の消化を。

先に消化のほうから。

60セカンズ」です。このブログでも前に「すげーよかった」と適当な一言を添えただけではありましたが触れている「バニシングイン60」のリメイクです。

うん、ダメですねーこのリメイクは。まず話は別物だし悪い意味でハリウッド的な大味・場当たり的なイベント・無駄な感動要素などなどアルマゲドンもあわやというダメダメリメイクです。オリジナルはそのすべてにおいて「カーアクション」で見せていたのに対し、リメイクは本当に無駄が多すぎるしニコラス・ケイジはいつものニコラス・ケイジだし。強いて言えばアンジーはそんなに好きじゃないけどあの髪型のアンジーは割と好きかな。白色のドレッドってマトリックスレボのあの双子みたいですが。

画面の粒子は荒いけんどオリジナルの方がはるかにフレッシュで面白いですので、もし見るならオリジナルでしょうね。

お次は「大列車強盗(1973)」
うん、普通に楽しい映画でした。実は西部劇映画ってそんなに好きじゃないというか得意じゃないのですが、これは割と素直に楽しめました。ちなみにリメイクなのか1903年にも同名の映画ありますねー。大学の授業で観たことがあったのをウィキの画像で思い出しました。
 
さてさて最後は「ブラッド・ダイヤモンド
なぜかBSで放送されることがここ最近多いエドワードズウィックの作品。
ズウィックといえば彼が監督した作品「恋に落ちたシェイクスピア」の制作にかかわっていたハーヴェイ・ワインスタインのスキャンダルというか普通に犯罪行為が露呈してメディアを賑わしていましたね。ベンアフに飛び火してたのは笑ってしまいましたが。パルトローすきだから結構ショックなんですけど、同時にちょっと興奮します(爆)。
と、冗談はさておき本作「ブラッド・ダイヤモンド」ですが、これはかなりの秀作ではなかろうか。
個人的には上手くバランスを取れていると思う。どういうバランスか。現実と理想。特定の社会構造やパワーゲームを上手く描きながら、その大流の中でもがくディカプリオ演じるジンバブエ出身の元白人傭兵のアーチャーと革命軍に襲われ家族は離散し息子は少年兵にされる黒人のソロモンという個の奮闘と勝利を絶妙なバランスで描けていると思う。
善悪どころか限りなく悪一色に近い悪(RUF-革命統一戦線)と悪(シエラレオネ政府軍)のぶつあいを誘発・利用してさらに搾取と利益を貪る資本企業(アメリカ企業)。いやーまったく白人というやつは!という国家的・企業的な大きなイデオロギーの中で個としてのアイデンティティによって行動するアーチャーとソロモンの道程は、決して表面的には感動的でも穏やかでもない(そもそもアーチャーにはソロモンのように純粋な家族愛ではなくダイヤという欲望による行動原理が主ではあるので)のですが、しかし最後まで見ると欲望だけではい、なにかもっと別の、人種を超えた(本作ではおそらく生まれ育った環境によるアイデンティティと死を悟ったことによる諦念)結びつきがあることを示してくれます。
ジャーナリストが女性であるというのも、たぶんディカプリオという「男」の欲望=リビドーを掻き立て誘引し、結果的にあのラストに持っていくためであるでしょう。そう考えれば死に瀕したアーチャーとマディーのいささか臭いかけあいも納得がいく。この辺が単純なハリウッド大作的男女のコテコテ演出とは違うところなのでしょう。
どうでもいいけど吹き替え浪川なのかよ。あわねー(笑)。
 
というわけでSSFFの方はどうだったか。
昨日のプログラムでは「ベビシッター」「シュガー&スパイス」「ビッグシティ」「種子」「ゲット・アップ キンシャサ」と企業のブランド動画を15本という合計3時間のプログラムだったのですが、とりあえず短編の方は一つ一つ軽く一言添えていく形でいきましょうか。
 
「ベビーシッター」
美女と野獣のダン・スティーブンスが出ている2011年の短編映画。
まあ別に、という感じ。人の電話の履歴を勝手に見たりバッグを開けたりするのはよしましょう、という教訓(嘘)。あれ犬が死んでたら臭ってるような・・・。
 
監督であるMi Mi Lwinの両親の暮らしを映したドキュメンタリーなポートレート。登場する母親がうちの祖母に似ている。あの16分の中であれだけ退屈な母親のルーティーンを映すというのは撮影する方も結構大変そうだ。父親は地味に向学心があったりするのも、どことなく閉塞感を増している理由なのかもしれない。
 
「ビッグシティ」
これ、プログラムの説明に「タクシー運転手と客に芽生えた友情」っていう言葉があるんですけど、オチをふせるためとは言えあまりに意地の悪いのではないか(笑)
まああれですね、金の切れ目が縁の切れ目です。というのを金がなくなった側が能動的に行動に起こし、あるいはそれを金を受け取る側の視点から描いた作品でもある。これは今回のプログラムの中ではまあまあ好きな方です。
 
「種子」
演出面ではこれが一番上手かったかも。
まあレシピエントの母親が泣き出すところは意図としてはわからなくもないですが、やっぱり最後にドナー側の母親を強調するために抑えた方が良かった気はするんですが、レシピエントの子の絵とかドナー側の母親の表情とかは結構いい感じでしたよ。最後まで雨が降っていたのも好印象。
 
「ゲット・アップ キンシャサ
個人的にはこれが一番すき。
上手くギャグも挟んできてくれるし、少年のしたたかに人生を生き抜こうとしている姿勢が非常に観ていて微笑ましい。やっていることはアコギですが。
この子が将来、武器商人になって紛争の火種を世界にバラまいているという二次創作を誰かやってくれまいだろうか。
 
ででで、ブランド映像が15本。要するに企業のCM動画ですな。公式で観れるものなので一応urlも貼っていきます。
 
ちなみに「企業名:作品名」といった形で紹介していきます。
 
鶴弥:耐える男たち
感想:結構早い段階で「瓦」であることが読めてしまいました。えーまあ予算の都合とか色々あると思いますが、体格がバラバラの人を使ってしまうと品質にバラつきがあるのか?と自分のように邪推する人間が出てくるのではないかと思います。
 
 
hp:The Wolf ft
感想:会場で観た動画には日本語字幕が実行委員会によってつけられていましたが、貼ってあるのなしですが、まあそこまで気にしなくてもプリンターのセキュリティーが甘いとそこから情報が抜き取られてしまうよーというのがわかる内容ではあるとおもうので。久々にクリスチャン・スレーター見たなーという印象。どことなくカイル・クーパーのタイトルデザインを思い出したりしたけど、よく考えると結構違うか。
 
docomo:25周年ムービー「いつか、あたりまえになることを。」   
感想:高橋一生の七変化が観れる。それだけで価値が有るです。あと「散歩する侵略者」から高杉真宙って高橋一生に似てるなー、兄弟役とかでなんかやってくれないかなーと思っていたので高橋一生の高校時代の役というので溜飲がさがった。
ともかく高橋一生萌え萌え。
 
Volvo:ABC of Death
感想:ドイツの2人の学生Daniel TitzとDorian Lebherzが制作した映像作品ですが、彼らはこれ以前にも「Dear Brother」という動画で話題になっていたようです。↓

vimeo.com

まあブラックなユーモアだなーという印象。会場の客も結構笑っていました。わたし自身はそこまでですが、まあ笑えるなーという程度。

 

NifMo:【短編ドラマ】轟満の先入観 ディレクターズカット版

公式サイトでショートバージョンとロングバージョンが観れるので公式サイトのurlをば

感想:えー会場で見たのはロングバージョンで最後に思い込みグラフではなく結構手の込んだクレジットが流れていました。結構面白いですね、相撲の伏線とか地味に貼られているのが芸コマ。ちなみに会場に監督とプロデューサー(だったかな)の軽いトークがありました。この短い時間でかなり上手くまとまっていると思うですよ、はい。

 

Take Note:A Life Story, A Love Story  

感想:これも日本語字幕付きで、夫婦が書置きを読みあってすれ違いがあって最後には孫ができたりして最終的には・・・という感じ。

 

TOYOTA:The making of new Vitz story   

感想:中々アイロニーな感じで面白いのと同時に、CMのCGがあれだけハイクオリティなことに驚き。元の俳優の演出と吹き替えのせいで若干臭みがあるものの、一般層に向けたCMとしてはおそらく正解なのでしょう。最近の運昇はガチで演技しているのかたまに不安になるのですが、どうでもいいか。あと「映画作ってるんじゃないんだ。CMを作ってるんだぞ」というセリフがこのブランド映像の難しさを端的に表しているような気がする。

 

Lacoste:Timeless, The Film (Director’s Cut)  

感想:特にない、かなー。動画見直すまで完全に失念してたし。あーでも関連動画のメイキングは結構楽しいかも。

 

バカルディ?:不明

動画詳細不明

感想:えーすみません。メモしそこなって動画が見つけられませんでした。たしかBACARDIっていう文字が出てきたのは覚えてるんですけど、それが酒だったかどうかすら覚えていないんですよねー。内容としては割と陽気な感じで、いろんな人の挙動を一時停止のコマ送りで見せていくっていう手法なんですが、製品まで覚えていなかったです・・・スマソ。

 

Guardian:Cannes Lion Award-Winning "Three Little Pigs advert"   

感想:三匹の子豚が実は狼を嵌めていたとしたら、という動画。昔から三匹の子豚に関して「豚が調子に乗っている」という絵ヅラがとても不愉快だったのでこれは結構好きな部類。

 

The Real Cost:"Straw City" (:60)

感想:狼の哀愁。

 

TOYOTA特別編 - 「THE WORLD IS ONE -MULTI SCREEN-」

えーなんか特別編の動画が見れなくなっているので、とりあえず二種類貼っておきますが、会場で見たものは三ヶ国+未来バージョンが四つ同時にスプリットスクリーンで流れていくタイプでした。

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感想:すごい日本的なやりとりな気がするんですが各国でもこんな感じなのでしょうか。あと別におっぱいの感覚しませんからね、試したことあるけど。

 

Burns and Smiles:the fight of the burn victims to change other people's look

 

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感想:公式サイトは英語ですらないので詳細はわかりませんが、やけどを負った人を支援する団体かと思われますな。ハロウィンだしなー、やけどが仮装に思われるからこの一日だけは笑顔でいられるというのは、中々辛いかもですな。やけどを負った人には悪いんですが、むしろかっこいいような気もするんですけどねぇフレディみたいで(みたいというかあれもやけどですが)。

 

マツ六 :『母の辛抱と、幸せと。』 

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感想:この作品も社員(社長?)の方が会場で軽く作品についての解説をしてくれました。 たしかに映像作品として考えるとお涙頂戴というのは考える余地があるのですが、CMということを考えるとやはり情動に訴えかけるのがベストなのでしょうねーというわたくしが常々考えていることをトークでもしていたので、意図的にエモーション重視で依頼したとのこと。ええ、泣きそうになりましたわたしも。

 

SANTANDER BANK:BEYOND MONEY

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感想:なげーよ。17分て短編じゃんすか。とかいいつつ普通に楽しんで見ていたんですけどね。SFに限らずファンタジー(ダンブルドアも記憶抜いてた気がする)とかでも割とある、あるあるネタ。記憶を売買するというもの。まあ銀行のCMとは思いませんでしたが、結構なお金が掛かってそうですぞ、この動画。そりゃまー一つの映像作品としてみたら色々と「どうなのよ」と思うポイントはありますけど、しっかりと序盤での伏線とか貼ってあったりしますからタダで見れる短編としては申し分ないのではなかろうか。

 

とりあえずこんなところで備忘録おしまいける。

 

 

ワンコインラブ

久々のアベマロードってことで、明日も映画を見に行くのですが観ました。

個々のデティールで笑える映画でありながら、ダメな人間が一人の人間との出会いによって変化していく普通に熱い映画でもあるという。まあ、笑えるディテールが多すぎ&配分のせいで後半40分と前半70分が別の映画みたいになってますが。緩急が本当に数秒なのでわかりやすいと言えばわかりやすいですが。

安藤サクラ、まったく異なる映画に変わるシーンの前後で体格が変わりすぎていて逆に失敗してないだろうか、これ。ゲームをやっている場面が前半と後半で二回同じアングルで撮っているのに、まったく体格が違うように視える。のに、同じ日に撮影しているというのだから凄まじい。見せ方次第でどうにでもなるという意味では、やはり演技もさることながら演出や衣装やメイクがどれだけ重要なのかということを認識させてもくれる。

しかしこれ、案外わたくし好みの映画かもしれない。一見するとまったくつながりのない怪しいおばさん(根岸季衣 演)は、しかしその実フリークス以外の何者でもない。もちろん安藤サクラ演じる一子もそうだ。そして終盤になって一時間ぶりに顔を現す親父も、一度は一子を裏切った狩野もそう。それぞれの過去が描かれるわけではない。けれど、たしかにわかる。そもそも父親はひもみたいなものだし、すわ統合失調症かと思わせる怪しいおばさんは(当然とはいえ)煙たがられる存在であり、狩野だって嫌な人間ではあるのだから。

狩野に「なぜボクシングを始めたのか」と問われたときの、実に陰なる者が言いそうな一子の回答も実に良い。あそこではきはきと、あるいはっきりと力強く答えられようものならしらけてしまう。一子はそんなやつじゃないはずだから。

素直に描くのが恥ずかしい。だから笑いを盛り込みこねくり回しているのに結局はまっすぐに突き進んでいる。ボクシングのシーン、予算や技術的な問題はあるだろうが、それにしたてベタな演出ではありませんか。だって、そう描くしかないんだもの、一子を撮るには。まったく、なんとも愛らしい映画であることか。この映画を素直に好きになれる自分で良かったと思える、思わせてくれる愛おしい映画。

 そう、終盤になってようやく判明するこの映画の本性とは、フリークスたちの挽歌でありすなわち百八円の恋なのである。エンディングまで含めて一本の映画なのだから間違いではないでしょう。

 そりゃわたしの好きな映画に決まってるじゃんすか。ただ、それは同時にわたしの中では一つのフリークスの敗北でもあるのですが・・・。

 

あと安藤サクラがかわいいという稀有な映画でもある。あの人、ほかの映画では強烈な存在感を放ちこそすれ、素直に可愛い役というのもないからなぁ。