映画観に行ったら嫌なもん観たよ、うん。才能の差というやつだ。あと審査員の審美眼(というかパワーゲームへ言及するべきなのかしら)。
京都明日で短編映画のプログラムは制覇なんですけど、差が激しすぎて困惑ですよこれもー。
とりあえず見た順、あと普段はランキングとか付けないんだけどランク付け=嫌がらせのようなものをしたくなる程度には去年との落差が激しいので。去年はどのプログラムにも最低でも一つは秀作があったんですが、今回はプログラムによってはハズレしかないものもあるんで。
その分、今日のプログラムで河瀬直美監督のスゴさを改めて認識できたというのはあるけれども。
適当に一言感想付けていく感じで。
プログラムA 2017年受賞プログラム1
「東京音℃」:CMかPVみたい。実際、3分半ですから監督もそのつもりなのでしょう。特になし。
「ハロー、アゲイン」:ナオミ・スコットがかわいい。
「偉大なる遺産」:韓国映画。日本で封切られている韓国映画はどれもハイレベルなのですが、短編はどうかというと・・・まあ、心拍のところは面白かったし会場でも笑いが起きていましたが、なんか大学在学中の授業でわたすが書いた超短編の小説みたいなオチのどうでもよさ。
「サイレン」:まあまあ。ぶっちゃけかなり早い段階でネタは分かってしまいましたし、包丁のくだりとか無理矢理感は否めませんがまあそんなものでしょう。といったところ(何様だ)
「巨人のならわし」:今回のプログラムのアタリ。というか、CGとは思えない手書き感で、その映像の質感にずっと思考を奪われていたので話が頭に入ってこないくらいでした。つっても木々はむしろCG感が強くて完全にリソースの注ぎ方を割り切っているからなんでしょうが。
いやージャパニメーションのCGってなんか使い方が画一的でもっといろんなアプローチすりゃいいのにと思っていたところにこれだったんで、今後の発展に期待できそうな感じ。
「born、bone、墓音」:ガレッジセールのゴリが監督した作品。にじいろジーンでしか見ないなぁと思ったら、こんなとこで活動もしていた。
今回の中では相対的に評価が上がっている。いやまあ、台詞とか子役(具志堅の孫娘とも割る)の叫びとか色々と言いたいところはあるんですが、芸人監督・芸人主演でちゃんと笑いどころがあって、しかも結構な頻度で笑えるというのは中々いいのではないでしょうか。会場でも一番ウけていましたし。そりゃドラマ的・コント的な笑いだったのはたしかなんですが、もともと宮迫とかとコントやってたしねぇ。わたすも普通に笑いました。あと沖縄(のさらに局所)文化の風習である「洗骨」というもののアピールも兼ねているという点でも興味深いものでした。最後の取ってつけたような台詞は排してもよかったとは思うけどねぇ。
プログラムE U-40注目の日本人監督
「ジュリエット✖2~恋音ミュージカル~」:アイドル?かなんかのPRかなにか。芋洗坂係長とか響のデブのほうとかが出ていた。いや、短編映画としてどうかと言われると「ダメです」としか言いようがないんだけど(u-40なのにどうしてあんなに古臭いクリシェの男子高校生ができあがるのかとか、あまりにカットの脈絡のなさとか・・・前者は意図的な気もしますが)、アイドルの眺めのPVだとしたらそれなりにいいのかもしれない。いやダメか、ストーリーあってないようなもんだし。そのへんはアイドル文化に疎いのでよくわからない。でも曲は結構いい感じかもーと思ったらAAAだった。
「ワレモノ注意」:ガチPV。わーなんか女子高生が好きそー。GREENのPVでありそーという印象。。
「胸にTATOOなんか入れて」:肩書きはあくまで肩書きであって、実力とはなんの関係もないぞ(監督のウィキを見ながら)。ぶつ切りカットとか、そもそも話がどうでもい感じとかPV感というかCM感がしゅごい。15分かけて迷惑かけた放蕩娘が都合よく許されるという話。「なんだその胸のタトゥーは」っておじさん、あんたそんなこと言いながら胸見てたろ!ていうか見てたからそう言ったんだよな!
まあすごくどうでもいい作品ではあるんですが、個人的に二箇所好きな部分がある。一つは「死人巻き込むなよ」という台詞と、おじさん目線で胸のタトゥーを映すところ。あそこは結構エロくていいと思う。巨乳じゃなくて成長期の膨らみかけっていうのがまた。
「ゆーことぴあ」:ピンサロが「BLOW JOB BAR」と訳されていたのがなぜかツボにはいってしまった。これが一番体裁を保っていたようなきもするが、だからどうというのだろうか。
このプログラムについて言いたいのは、もっと才能あるU-40いただろ。入江悠とか40じゃなかったっけ。もうちょっとなんかねぇ、層の薄さを感じてしまうのですが。いや、本当はもっとすごい監督がいるんでしょうけど。
プログラムC 2017年受賞プログラム3
「想い出の保管場所」:トム・ヒューズっていう俳優が出ているのですが、この人を知らなかったので特に興奮したりはせず。ただ演技はなかなかよかったと思いますよ。あれはたぶんアスペルガーか発達障害なんでしょう。それを特に説明的なセリフなしで見せる手際とかは評価していいのではなかろうか。刺激に敏感だから、ということを理解していないと色々とわかりにくいですが。
そういえば、別のプログラムでもナオミ・スコットが出てたりダン・スティーブンスが出ていたりとメジャー俳優枠みたいなのがあるっぽいのですが、去年がジュード・ロウとアラン・リックマン、マーティン・フリーマンとビッグネームばかりだったのに比べるとどうも各落ち感が否めない。いや、キャリアが違うので何とも言えないのですが。
「華やぎの時間」:低予算であることがまるわかりの作りではあるんですが、結構笑えた。ロウソクのくだりとか。あと先輩役の人が本当に不快な感じがうまい。なんか芸人にいなかったかな、こういう感じの人。
「ヒッチハイク」:韓国映画。ビッグシティの和解エンド。でもない。
「パカリアン」:人形アニメーション。要するにストップモーションなのでしょうが、背景は完全に合成だったりと予算のなさを見せ付けてくれる。やはり斎藤工をキャスティングしたことが予算逼迫の原因か。
前から思ってたんですが、斎藤工って実はそこまで演技達者というわけではないような気が。今回の声優もなんかずっと平だったし、そもそも重宝されているという感じもしないし。いや、わたしが彼の活躍している映画をみていないだけなのかもしれませんが。
これは邪推なんですが、彼自身はその俳優としての才能の限界を感じているからこそシネフィルとしての知識を活かして監督業に乗り出しているんじゃないかなぁ。と思った作品。アニメーションの質が高いというわけでもお話が面白いというわけでもなく、去年の「眠れない夜の月」とは月と鼈。よくわからないけどストップモーション枠みたいなのがあるのだろうか。
「窓から見える世界」:最初はパイキーかとも思ったのですが、そういう設定というわけでもないのかな。「mr.rady」は「おねえさん」ではなく「オネエさん」と訳して欲しかった。オネエさんの最後の方のカットがよかった.
プログラムD 2017年受賞プログラム4
「Home Away From Home」:もっとシームレスにしたら今敏っぽいかもしれない。日本人の言葉が風鈴であることの意図はわかるのですが、他はよくわからない。でもまあ割と好きな作品。
「Falling Up」:特になし。いやまじで。
「水戸黄門Z」:水戸黄門役のひげが気になった。ミュージカル仕立てというのはなんとなく新鮮だが、別にクオリティが高いというわけでもないので特になし。いばらきはほかに作品がなかったのだろうか。
「水を、ください」:まあ、真新しい時計の一瞬のカットとかさ、意図はわかるけどあの世界観に合ってない気がします。暴力シーンのカットはアングルのせいでよくわからないことになっていたなーとか。どういう病なのか知りませんが病気の娘のガタイが良すぎて笑いました。ラストは大爆笑。
「アナ」:イスラエルの映画。一番映画していました。ベストアクトレスも納得のやぼったすぎる中年女性に笑う。あんなラインが出る服着たらそりゃそうなるわ、という。何が映画的かというと、間の取り方なんじゃないかしら。うん、でもまあ一番映画でした。
プログラムE 世界も認める日本人監督
はい。文字通りほかのとはレベルが違います。そりゃ一線で活躍する監督なんだから当然といえば当然なんですが、正直このプログラムだけでほかのプログラムを蹴散らせる満足度。
「キックハート」:湯浅政明監督作品。相変わらずアニメーションであり、アニメーションである。台詞なしにキャラクターの心情を伝えきるアニメーションとかまさにといった感じ。
「嘘ーLiesー」:はい、来ました本命の大物。河瀬直美監督でございます。「あん」を見てからこの監督の名前はよく覚えていたのですが、全プログラムの中でダントツだったんじゃないでしょうか、これ。ただのインタビュー場面(少なくとも表面上は)をあそこまで魅せるとは演出の手腕がちょっとおかしい。まず別所哲也。この人が演じる男の胡散臭さの演技がすごい絶妙で、ある事実が明確に提示される前から「なんか怪しいなぁ」というのをにおわせてくるのが絶妙。まあタイトルによる先入観もあるのでしょうが、むしろそれを狙ってこのタイトルにしているのだったら尚更周到ということなのですが。
で、通訳の女性との不倫という情報が明確に提示される前から特定のワードによって通訳の女性(この人の演技も最高)が声を曇らせるのですが(あれ音も編集してんのかな)、そこに至るまでの演出がもうおかしい。たぶん、一つには二つの言語が違和感なく同居していることもあると思う。それに加えて英語も普通に聞き取れる英語であるため、否が応でも集中力を要されるというところもあるだろうと。
ちょーっとレベル違いすぎて驚いた。いや、「あん」の時点で相当な演出力があると思ってはいたのですが、短編でさえこんなもの見せてくるとは思わなんだ・・・。
「水準原点」:抽象アニメはいまいちよくわからんのですが、この試みそのものは初めてなので最後まで食い入るように見てました。最後に全文載せてしまうのはアニメーションの敗北ではないかと思いますが。というか、これ日本語に慣れてないと結構難しいと思うんですが(日本語に慣れていても最後のあれがないと読み取れないと思いますが)、賞を取ったということは何かほかに芸術的な側面で突出したものがあったということでしょう。でもクレイアニメの激流表現というのはなかなか面白い。
「ゴムテッポウ」:伊丹十三の短編。伊丹十三に関しては「家族ゲーム」に出ていたことを後で知った程度なのと、一定の評価を得ているということくらいしか知らなかったので、見る前の評価などはほとんど知らず。で、どうだったかというと、なんかよくわからないけど見ている間すごいフラストレーションが溜まった。なぜかわからない。あれか、インターバル挟んでいるとはいえ六時間ぶっ通しで映画見てたからだろうか。
うーん、なんでだろう。
とまあこんなところでしょうか。