dadalizerの映画雑文

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ホフマンの妄想

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「ホフマニアダ ホフマンの物語」

2,3年前に劇場公開された当初から気にはなっていたもの結局見逃していて、今回の特集でようやっと観ることができた次第なのですが、まあ正直なところ当時ほどの熱量があったわけでもないのと仕事終わりで結構ウトウトしてしまった。

決して作品が悪いというわけではない。むしろ心地よい微睡みをもたらしてくれるものではあると思うのですが、なんだかテンションが妙な映画ではある。

もしもティム・バートンがロシアで生まれてたらこんな感じなのだろうか、とかあまりにもあまりな雑感を抱いたりもした。あとこれ原作やそのベースとなったホフマンの著作および彼の人生などをある程度知っていた方が楽しめる…というか理解できる、割とハイコンテクストな映画ではあると思う。

そういう背景を知らずに見ていると劇中劇的な入れ子構造を持っている上に劇中のキャラクターの妄想と現実が極めてシームレスに行ったり来たりして、すわパラノイア今敏かと思うような(あそこまで先鋭ではないのですが)具合なので、原作知らずに物語を追っていると少し困惑するかもしれません。

その上ディテールの細かな人形のアニメーションやら人形自体のカリカチュアされた造形やらでダウナー系のドラッギーな感覚に埋没してしまう。それはそれでとても心地よいものではあるので悪くないとは思うのですが、戯曲の名前は知っていても実際に読んだりみ観たりしたことはない無教養な私のような人間にはやはり筋を追うためにパンフレットが必須な気が。

本作自体の製作の難航具合やらを考えるとパンフレットを出せたこと自体が日本の配給やらがかなりがんばったであろうことを思わせる薄さ(白黒で紙質も厚めのチラシのような感じ)ではあるのですが、値段は普通のパンフレットの半分で人物相関図が書かれた紙ぺらとクリアファイルもついていたので木戸銭払わにゃとお布施いたした。

 

そういうわけでこの映画のある種の分かりにくさ、というのはホフマンの伝記と彼の複数作品のモチーフを、よく言えば自在に悪く言えば無節操に盛り込むことによる夢幻的感覚から来るものなのだろうと思う。何度も書きますが別にそれが悪いというわけではなく、むしろこの脚本とストップモーションアニメであるからこその夢幻性だとは思う。実際、この脚本のまま2Dアニメーションやライブアクションで撮られた場合、割と惨憺たるものになったのではないかという気がする。

私がストップモーションアニメ、とりわけ人形を用いたアニメに惹かれるのは、感覚的なものなので説明しづらいのですが、物質としての(疑似的な)フィジカルとマテリアルのライブアクション的要素が、「絵じゃん」というツッコミを無効化しつつも絵のアニメーションを志向する自己矛盾的な在り方で、そういったあわいの中で現出する奇妙な高揚感を味わえるからなのです。

この感覚をCGでどこまで再現可能なのか、というのはストップモーション風CG映画というのがせいぜい「レゴ~」シリーズくらいなものなのでわからないのですが、あそこまでストップモーション風でありながら自由闊達すぎるアニメーションをやられると、物質の限界性を完全に逸脱しているがゆえに逆に私の感じるものとは違うような気がしてしまうので、今のところはストップモーションとのすみわけはできているのかもしれない。まあ、塩梅の問題でしかないのかもですが。

とはいえ背景にCGを使ったり、最近のストップモーションアニメは割とテクノロジーを導入しているのでチェリーピッキングでもモーマンタイでしょう。